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[ 科学技術・大学 ]
(2017/9/22 05:00)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2022年の打ち上げを進める深宇宙探査技術実証機「DESTINY+」(デスティニープラス)は、地球の成り立ちを探ることがミッションだ。地球の生命の起源となる炭素や有機物の供給源の可能性がある地球近傍の小惑星「フェートン」を目指し、そこから出るダストを分析する。技術実証できれば、小型で高性能の探査機によるミッションが増え、深宇宙への敷居が下がると期待される。(冨井哲雄)
【イオンエンジン】
文部科学省はデスティニープラスの開発費として、18年度の予算概算要求に2億8700万円を計上。JAXAは18年度から開発に入り、22年にも小型固体燃料ロケット「イプシロン」で打ち上げる。
機体の重量は480キログラム。小惑星探査機「はやぶさ2」に比べ33%増の推力を持つイオンエンジンを搭載する。ロケットで実証機を軌道にのせた後、イオンエンジンにより少しずつ軌道の高度を上昇。周回する軌道が月に近づいたところで、天体の重力を利用し軌道を変更する「フライバイ」を使ってフェートンを目指し、カメラ観測を実施する。
フェートンはふたご座流星群の母天体で、炭素を含む小惑星。地球に接近する軌道を持つ天体の一種で、地球衝突の可能性が高いとされている。
【水や有機物】
原始の地球には水がないとされており、地球外から水や有機物が運び込まれたと考えられている。理学ミッションを担当するJAXA宇宙科学研究所の藤本正樹教授は、「フェートンが放出するダストを調べれば、地球の起源が明らかにできるかもしれない」と期待する。
衛星に載せる観測機器の候補には、フェートンの形状や表層の地形などを調べるカメラ、ダストを調べる「ダストアナライザ」(DDA)などがある。
【海外と連携】
20日にJAXAとドイツ航空宇宙センター(DLR)が宇宙開発などに関する共同声明を発表。その中で独研究チームが開発したDDAの搭載を検討するとした。DDAは、ダストを検出するとその場で化学分析ができる。これは、地球にサンプルを持ち帰る「サンプルリターン」の実験に匹敵するという。
藤本教授は、「30年の開発実績を持つドイツチームの分析器を利用し、ダストを分析したい」と海外との連携に期待する。
(2017/9/22 05:00)