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(2017/10/21 07:00)
商品開発、営業、販売促進等、あらゆる場面で担当者は「顧客ニーズをしっかり掴む」ことが求められます。そこで、顧客へのヒアリングやアンケート調査などが行われていますが、ヒアリングでは顧客が自身のニーズを正確に把握していない場合、アンケート調査では、結果は得たものの、そこから核となる顧客ニーズが見出せない場合があります。これらの問題点を解消し、顧客ニーズを知る、より実践的なマーケティングリサーチ手法として、複数の顧客を一堂に会して、様々な意見を直接聞く機会を持つフォーカスグループインタビュー調査があります。
アンケート調査が、各選択肢を選んだ実数と構成比率(%)で集計される数字主体の定量調査であるのに対して、フォーカスグループインタビューでは、顧客の発言や表情と言った定性、アナログ的な調査結果が得られます。
現在、日本の調査市場は、推計1819億円とされ、その13%は定性的な調査が占めており、その大半はグループインタビューとなっています。
日本では、以前より商品開発やコミュニケーション開発(広告、販促、パッケージ)時に、多くの一般消費財企業がこの調査手法を採用しており、最近では非消費者向けサービスを扱う企業での採用も増えています。
ちなみに、顧客ニーズに関連する調査が目的別の上位を占めています。【図1】
フォーカスグループインタビューの 「対象者」「調査手法」「実施準備」
フォーカスグループインタビューは、通常、5~6名の顧客を一堂に会して、司会者(モデレーター)が進行役を務め、約2時間の座談会を通じて顧客の意見収集を行います。参加対象となる顧客は、自社製品の顧客や競合製品の顧客、また潜在顧客等、製品の利用状況を基に選出します。また、参加者相互がストレスなく、より多くの意見を交換しあえるよう、年齢・性別や職業・職種(属性)等が同一の参加者で構成されるように配慮し、調査の目的に応じて、異なる顧客層、属性を対象に2~6回のインタビューを実施します。
このインタビューのユニークな点は、顧客の話、意見の収集に際して、顧客の発する言葉だけではなく、顧客の表情や顧客相互の雰囲気をマジックミラーやモニター越しに観察することで、言葉の信ぴょう性や顧客ニーズの確信に迫ることができることです。また、座談会の特徴として、参加者相互の共感や対立意見、時にはやや脱線したフリーディスカッションから、思わぬ意見や気づきが得られます。
フォーカスグループインタビューの実施に際しては、マジックミラーやモニターの完備した専用会場とインタビュー技術を有し、かつ調査対象の製品分野に精通する司会者(モデレーター)を準備し、調査依頼主の調査目的、知りたい顧客ニーズ(品質、価格、利用局面等)や仮説を踏まえ、設問やディスカッションのインタビューフローを作成します。フローは、どのような条件や状況にある顧客の意見であるか、その関連性が把握できるように作成することが重要なポイントとなります。
顧客ニーズの把握方法
再び本題に戻って、「いかにして顧客ニーズを把握するか」ということについて考えてみましょう。
人は自分が本音で話しているのか、建前や都合や見栄で話しているのか、意外と気付いていません。例えば食事で「家族が喜ぶから」と言えば「焼肉」「刺身」。「野菜がたっぷり取れるから」と登場するのは「鍋」ですが、これは主婦の手抜き言い訳メニューの典型です。この例に漏れず、顧客から発せられる本音と建前が錯綜する言葉に惑わされないこと、矛盾に気が付くことが大切です。先入観を持たずにひたすら観察し、なぜ顧客はそのように感じたのかを深く深く想像します。そして、そこで得た洞察に顧客の環境や日々の心理を付加することで顧客の本質的なニーズが見えてきます。
ところで、定性調査から導かれた気づきや仮説は、主観的な情報です。これを基に、第三者が納得する合理的な商品企画や販促計画を策定することは、かなりの難関です。画期的な新商品が合議制では産まれない理由の一つがここにあります。この難関をクリアする方策として、商品企画等に関わる関係者はこのフォーカスグループインタビューで顧客をつぶさに観察し、その体感を共有することをお勧めします。
(毎週土曜日掲載)
(『新製品情報』2014年5月号)
【著者紹介】
日置 孝子(マーケティングコンサルタント)
株式会社ウェルコインターナショナル代表取締役
略歴:1984年より独立系マーケティ ング会社にて、40余社の市場調査、商品・事業開発に従事。2001年、富士通株式会社のインターネット新規事業「iMiネット」の立ち上げに参画、2002年、同事業独立会社の株式会社ライフメディアに転職。インタラクティブマーケティング研究所所長を経て、2003年、ウェルコインターナショナルを設立し現在に至る。
(2017/10/21 07:00)