[ トピックス ]

【電子版】マーケティングの出番ですか?(2)ユーザー目線で開発する

(2017/10/14 07:30)

今回は、現在進行中のプロジェクトを通じて、マーケティング視点(ユーザー目線)の新製品開発例をご紹介します。

某プロジェクトでは、新製品開発に当たり、既存製品への新技術の適用、機能追加からではなく、ユーザーの価値視点からアプローチし、「どのようなニーズを満たす製品が欲しい?」、「その製品の購入希望価格はいくら?」、「どれぐらいの品質であればよい?」を明らかにしようとしています。

具体的には、製品の便益(効用)、想定価格、想定品質について仮説を設定し、潜在ユーザー層(ターゲットセグメントユーザー)を対象に製品の価値とその受容度について調査を行いました。

製品開発に従事されている方々は、新製品開発におけるニーズ調査について、以下の危うさを感じられると思います。

・仮説設定が間違っている

・仮説が回答者に正確に認識されない

・仮説設定が不十分である

・仮説設定はあっているが、調査対象の潜在ユーザー層が適切でない

いずれの場合も、回答より有意義な仮説検証はできません。

そもそも現在存在しない製品について、調査を通じて潜在ユーザーが新製品の「便益(効用)」を正確に認識することは容易でなく、更に、その認識を前提として「価格」と「品質」の相関性を明らかにすることは甚だ困難ですので、ここで行う調査のゴールは以下がポイントになります。

・検証された仮説の全て、または一部が、新製品開発の加速化、新市場創出の原動力足りえる

・仮説と一部異なる、または全く異なる調査結果から、新製品開発の再考、市場創出の新たな糸口が見つかる

・新製品開発の加速化/継続/中止を意思決定する決め手、または参考になる

某プロジェクトでは、残念ながら潜在ユーザー層に対するヒアリング調査において十分な仮説検証ができず、また、いずれのゴールにも到達できませんでした。そして、この段階で、新製品開発プロジェクトのマネージャーは、開発を加速させる手応えが得られない状況下、新市場の探索を継続するか、製品開発アプローチを見直すか、あるいはプロジェクトを断念するかの意思決定を迫られています。

新製品開発においてこの種の紆余曲折はつきものであり、加えて、意思決定に内外の間接的要因も絡み合う場合、一層判断を難しいものにします。ユーザー調査が不発に終わったからと言って、まだ何も明らかになっていない段階で中止を判断するのは、やや性急、かつ後ろ向きに過ぎるかもしれず、他方、何の根拠や当て(期待)も無いまま何となく継続することも憚られる状況です。

  • 【図1】

ちなみに市場では、数多の失敗製品が淘汰され、わずかな成功製品が隆盛を極めますが、現在のスマートフォン、タブレットPCによる市場創造、 加速度的な普及を、一体誰が予測することができたでしょうか?(【図1】iPadの市場参入後のシェア変動。出典:Fortune)新製品開発における市場調査、予測の限界を感じる典型例です。

今回、当プロジェクトでは、潜在需要の見極めに際して、右記の価値ポジション分析チャートを基にプロジェクトメンバーが再検討、評価することになりました。潜在ユーザーは、「便益」、「品質」、「価格」に関して、その相関性をバランス良く価値評価をしているとは限りません。むしろ新製品にあっては、どれか一つの要素が飛びぬけていることがブレークのきっかけとなることが往々にしてあり、潜在ユーザーの反応(回答)もそのような観点で補正しつつ再検討、考察する必要があります。

  • 【図2】

  • 【図3】

評価のポイントは次の通りです。

・リピート、かつ大きな市場が見込める製品の評価基準→便益A、品質Y、価格3

・一過性、かつ市場が限定的な製品の評価基準→便益C、品質X、価格2

・製品バリエーションにより、市場が拡大する製品の評価基準→便益C、品質Y、価格2

上記いずれかの評価基準がクリアできれば、当プロジェクトは継続する価値があると思われます。

ところで、貴社における製品開発の取組みは順調でしょうか?

既存製品のユーザー視点による改善、改良や競合他社製品との相対評価に際して、当価値ポジション分析チャートによる評価から新たな方向性が見出だせるかもしれません!?

(『新製品情報』2014年3月号掲載)

【著者紹介】

株式会社テンプロテクシー代表取締役 武道誠芳(マネジメントコンサルタント)

所属:テンプロクシー にてWeb関連サービス、マーケティン グサービス、ロボットビジネス等を展開

生年:1960年8月

出身:富山県富山市

学歴:横浜市立大学商学部経済学科(1983年卒)

経歴:外資系コンピュータメーカー、システムコンサルティング会社、サイパン合弁事業への参画後、1996年11月 起業・独立

(2017/10/14 07:30)

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