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[ 科学技術・大学 ]
(2017/10/26 05:00)
理化学研究所統合生命医科学研究センターの石川文彦グループディレクターらは、血液がんの一種で再発率が高いとされる「急性骨髄性白血病」の根治につながる治療法を発見した。「FLT3」という遺伝子の異常による同病の患者に着目。FLT3の異常を抑える治療薬の候補化合物と、同病の治療の抵抗性に関わる遺伝子「BCL2」の働きを抑える薬剤を投与することで、同病のマウスの8割を根治できた。
理研は2016年に白血病治療の開発を目的としたベンチャーのフラッシュ・セラピューティクス(米マサチューセッツ州)を米ハーバード大学と共同で設立している。19年にも治療薬の候補化合物の臨床試験を虎の門病院(東京都港区)やハーバード大で始めたい考えだ。
研究グループは、患者の細胞を免疫のないマウスに移植し病態を再現できる「ヒト化マウス」を作製。そのマウスの解析により、FLT3に異常が起きると、正常な血液の細胞が白血病細胞に変わることを明らかにした。
さらにFLT3の異常と他の遺伝子異常を同時に持つ19人の患者の病態をヒト化マウスで再現。FLT3たんぱく質の異常を阻害する低分子化合物「RK―20449」を同マウスに投与すると、全マウスで白血病細胞が減少することを確認した。
このうち5症例を再現したマウスでは血液や骨髄などから白血病細胞を根絶できた。
一方で14症例を再現したマウスでは、同薬剤への抵抗性を持つため白血病細胞が一部死滅せずに残った。この治療抵抗性の原因として細胞が死なないようにBCL2たんぱく質が働くことが原因であることを突き止めた。そこでRK―20449とBCL2阻害剤を併用し投与することで、FLT3が異常なマウスの8割で白血病細胞を根絶できた。
成果は26日、米科学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン電子版に掲載される。
(2017/10/26 05:00)