- トップ
- 科学技術・大学ニュース
- 記事詳細
[ 科学技術・大学 ]
(2017/10/30 05:00)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、地球圏の外にある「深宇宙」の探査機と地球との間で、従来の4倍以上のデータ量を送れると期待される周波数32ギガヘルツ(ギガは10億)の「Ka帯」での通信技術を確立した。地球から3億キロメートル離れた小惑星「リュウグウ」に向かう探査機「はやぶさ2」と地球の地上局との間で通信の実証実験に成功した。Ka帯は8ギガヘルツのX帯通信の2倍以上の距離での通信が可能で、深宇宙探査機の標準装備となることが期待される。
実証実験でKa帯電波の受信には米航空宇宙局(NASA)のアンテナを使用。地球観測衛星などに使われているX帯に比べ4倍となる毎秒16キロビットの伝送速度を実現した。
19年頃にJAXA臼田宇宙空間観測所(長野県佐久市)に新設するKa帯受信に対応したアンテナを使い、リュウグウでの観測データの通信の検証を想定する。
32ギガヘルツのKa帯は深宇宙用の周波数領域。高周波数であるほど電波をビームとして飛ばす際にエネルギーを集中させやすいため、効率良く信号を送れる。だが悪天候においては電波の損失が多くなるという短所もある。はやぶさ2ではX帯での通信機能も備え、天候が良ければKa帯、悪ければX帯を使うなど2種類の電波を使い分け、効率的に運用する。
小惑星リュウグウには構成成分として有機物や水が含まれていると考えられている。リュウグウの試料を持ち帰り分析することで、地球や生命誕生の謎に迫れると期待されている。はやぶさ2は2018年6月にもリュウグウに到着する予定。
はやぶさ2プロジェクトの通信系を担当するJAXA宇宙科学研究所の戸田知朗(ともあき)准教授は「Ka帯通信を利用し転送できるデータ量が増えることで、データ選別が不要になり、多くのデータを地上に送れる。今まで意味がないと思っていた大量のデータから、新しい現象を見つけだすといった別次元の科学に取り組めるのではないか」と期待している。
(2017/10/30 05:00)