(2017/11/27 00:00)
目玉は、システム構築(SI)企業の育成事業
ロボット利活用社会の創出に向け、国ができることは何か-。11月29日に開幕する世界屈指のロボット技術見本市「2017国際ロボット展」。日本のロボット政策を牽引する経済産業省は、過去最大規模のブースを構え諸施策をアピールする。中でも目玉は、2017年から実施しているシステム構築(SI)企業の育成事業だ。ブースでは経産省から支援を受けるSI企業が、講演や実機展示でロボットの新たな使い方、そして自社の成長戦略を紹介する。
「ロボットの利用領域を広げるには、SI企業がもっと活躍しないといけない」-。経産省の小林寛ロボット政策室技術総括係長は、こう断言する。誤解されがちだが、多くのロボットは本体があるだけですぐに使えるものではない。例えば工場で使われるロボットなら、周辺機器と接続して動作設定するなど、専門ノウハウを駆使したSI作業が不可欠だ。それ故に、人手不足など社会課題の解決に向け、ロボット普及のカギを握る存在としてSI企業に注目が集まっている。
注目の企業や導入事例を紹介
ロボットSIの需要が膨らむ中、この分野で事業拡大を狙う企業も着実に増えている。生産管理ソフトウエアなどを手がけるトムスシステム(11月29日14時10分~講演)が、その一つだ。同社は経産省と日本ロボット工業会の支援事業を活用し、検査工程を自動化できる新たなロボットシステムを確立した。このシステムを既存の生産管理ソフトなどと組み合わせて提案し、顧客満足度を高める戦略だ。
システムを構成するのは、垂直多関節ロボット、ステレオカメラ、そして人工知能(AI)の一種であるディープラーニング(深層学習)技術。ロボットが柔軟な動きで次々と製造物を運び、ディープラーニングで外観に問題がないかをチェックしていく。人手不足対応のほか、生産効率向上、作業品質改善といった効果も見込めるという。
一方、各種制御機器などを販売するFAプロダクツ(12月1日14時10分~講演)は、経産省の支援の下、ロボットSI事業の新拠点を栃木県小山市に開設する。パレタイジング(荷積み)やピッキング(取り出し)など、計13種のシステムを展示。ターゲットに据える北関東の物流、食品といった業界の関係者が実演を見られるようにし、自社のSI技術をアピールする。
数ある展示物の中で注目したいのが、東京大学発ベンチャーであるMUJINの技術を生かしたパレタイジングシステムだ。MUJIN製コントローラー(制御機器)を用いることで、ティーチング(教示)と呼ばれる産業用ロボット特有の動作設定業務が不要になる。ティーチングは専門的な知識・ノウハウが必要なため、省略できることによるメリットは大きい。食品業界などロボットに慣れていないユーザーを獲得する上で、有効な武器になりそうだ。
経産省ブースではSI企業育成策のほか、ロボットの新たなユーザーを支援する「ロボット導入実証事業」も紹介する。昨今の採択対象で特にユニークなのが、石川県加賀市の伝統工芸品「山中漆器」の事例だ(11月29日13時半~講演)。量産品の塗装をロボットに任せることで、職人は高付加価値品の製作に専念できるようになる。また、熟練職人の技をロボットに正確に再現させ、技能伝承に活用することも狙いだ。
用いるのは、塗装機器を先端に取り付けた垂直多関節ロボット。導入後、必要な人員は従来の2人から1人になり、作業速度も上がったため生産性は以前の約3倍に高まった。
こうした伝統産業では、担い手不足が大きな課題だ。ロボットの活用が進めば技能伝承が円滑化し、また職場環境が改善されることで人材確保も進む可能性がある。
政府が「ロボット新戦略」で目標地点に定める2020年まで、あと2年。SI育成や導入実証など、経産省の施策も徐々に成果を生み始めている。そうした状況下で開かれる2017国際ロボット展。本格的なロボット利活用社会を垣間見る絶好の機会になりそうだ。
2017国際ロボット展 経済産業省ブース
経済産業省 ロボット導入実証事業/システムインテグレータ育成事業
【展示会名】2017国際ロボット展
【日時】2017年11月29日(水)~ 12月2日(土)
【会場】東京・ビッグサイト
【小間番号】IR5-02(会場図はこちら)
【講演聴講料】無料
(2017/11/27 00:00)