[ 政治・経済 ]
(2017/11/23 05:00)
政府・与党が本格協議に入った2018年度税制改正は、所得税改革をめぐる「高所得者」の定義が焦点になる。給与所得控除や公的年金等控除を縮小する高所得者の線引き次第では、すべての納税者を対象とする基礎控除の拡大に必要な財源確保が難しくなる。高所得者は一般に年収1000万円超と位置づけるケースが多いが、これより少額だと中間層の税負担が増し、高額だと税収が減る。子育て世代への配慮といった難題も抱える。(編集委員・神崎正樹)
政府・与党は、多様化する働き方に対応した所得税改革を進める。
特定の企業に属さないフリーランスなどは、給与所得者が恩恵を受けている給与所得控除が適用されない格差問題を抱える。そこで給与所得者のうち、高所得者の給与所得控除を縮小しつつ、すべての納税者を対象とした基礎控除を拡大することで格差を是正する。高所得者に限って基礎控除の拡大幅に差を設けることも検討する。
また年金受給者の公的年金等控除については、働く高齢者が給与と年金で二重の控除を受けたり、高額な不動産収入を得ながら年金で控除を受けたりしている富裕層を対象に、年金控除を縮小する方針を固めた。
課題である高所得者の定義については、給与所得控除の場合は年収1000万円超を軸に調整する見通し。現在、控除額は年収に応じて決まり、年収1000万円以上は220万円を上限に控除されている。
給与所得控除は中低所得者も含めて縮小することを視野に入れるが、その場合は高所得者の縮小幅をより拡大する方針で、縮小幅の設定も焦点だ。
政府税制調査会(首相の諮問機関)は所得税改革に関する中間報告で、主要国より手厚い給与所得控除は「中長期的には主要国並みの控除水準とすべく、漸次、適正化のための見直しが必要」としつつ、具体的な控除額には言及していない。
他方、公的年金等控除については、年金額や年金以外の収入などで高所得者を定義づける方針。ただ、いずれにしても高所得者や高齢の富裕層からどこまで理解を得られるかは不透明。22日に始まった自民党税制調査会の議論も曲折が予想される。
高所得者の定義をめぐり、子育て世代への配慮も問われる。政権は少子化対策となる「人づくり革命」を看板政策に掲げており、年収1000万円超の子育て世代への控除縮小と政策との整合性をいかに保つかが課題だ。
政府・与党はこれら複数の課題を調整し、12月中旬に与党税制改正大綱をまとめる。
(2017/11/23 05:00)
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