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[ 中小・ベンチャー ]
(2017/12/23 07:30)
角野製作所(岐阜県恵那市、角野秀哉社長、0573・25・2788)は、毎秒100リットルの水の流れで500Wを発電する小水力発電装置「ピコピカ500」を開発した。同社の従来製品に比べて発電量が100倍で、実証実験を経て、2018年4月にも国内市場に投入する。拠点を置くミャンマーでの展開も本格化する。角野社長は「ミャンマー展開を足がかりに、電力供給が十分でない世界のさまざまな地域でたくさん使ってもらいたい」とし、将来的には東アジアにとどまらず、南アジアやアフリカなどへの進出も視野に入れている。
家族一世帯の消費電力をまかなう
小水力発電装置は一般河川、農業用水、上下水道などに設置し、貯水池や調整池といった形で河川の水をためて発電に生かすのではなく、水の流れをそのまま利用して発電する。
角野製作所の新たな小水力発電装置が発電する500Wは「平均的な一世帯あたりの消費電力に当たる」(角野雅哉新事業グループ主任)。この装置に関心を持った日光市(栃木県)、今市工業高校、協和コンサルタンツの3者と産学官連携し、12月15日に日光市で実証実験をスタートした。
装置の生産コストや耐久性などに関する課題を取り出し、必要に応じて改修、調整を加える。その上で、価格や仕様の詳細などを決める。ミャンマー展開については、現地のマーケティングで協働した川端鐵工(富山県黒部市)のほか、現地企業2社とヤンゴンに設立した合弁会社「カワバタ・スミノ・リミテッド」を拠点に、同国の各地域にこの装置の利用を促したりメンテナンスサービスに取り組んだりする計画。角野社長は「身の丈に合った形でじっくり腰を据えて進める」という。
水車の羽をらせん状に取り付け
この装置は従来モデルを大型にした製品で、前作同様、水の流れを受ける水車の羽をシャフトに対して螺旋(らせん)状に取り付けたところが特徴だ。NPO法人・地域再生機構の駒宮博男理事長のアドバイスを受けてこの形状を採用。角野主任によると、螺旋式の羽は「落差の小さい水路に適しており、水の流れを効率よく回転エネルギーに変えられる」。
水路に設置した装置本体で水の流れをいったんせき止め、一定水位まで上昇した水が、本体の内部に通した導水管に向けて勢いよく流れ込むようにする。流れ込んだ水が螺旋状の羽を持つ水車を回し、そこで発生した回転エネルギーが水車のシャフトの端に取り付けた発電機を介して電気エネルギーに変わる仕組みだ。
角野製作所は12年に再生可能エネルギー分野に参入。毎秒10リットルの水の流れで5Wを発電する小水力発電装置「ピコピカ」を開発し、主に環境教育用の教材として拡販してきた。その後、海外にも販路を求めていたところ、NPO法人「小水力発電をミャンマーの農村に」の大津定美代表理事らの要望があり、ミャンマーでこの装置のマーケティングと実証実験を行った。
装置の発電量を増やすほか、日本に比べて砂の粒が多いミャンマーの河川の特徴などに装置を対応させれば、一定の需要が見込めることから、17年4月に川端鐵工など3社と合弁し、海外進出に乗り出した。角野社長は「この装置が照らす明かりで、電力供給が不十分な地域の子どもたちに勉強しやすい環境をつくりたい。将来、その国の発展に貢献できる人材に成長してくれるはず」と話す。
角野製作所は、小水力発電装置の開発・製造・販売について、再生可能エネルギー事業として主要な業務に育てる構え。同社は主にチタンやインコネルといった難削材の加工を手がけている。ワーゲン、プジョー、ルノーをはじめ、ボーイング、エアバス、ボンバルディアなど向けの自動車用、航空機用のエンジン回り部品が多く、H2ロケットやF1の部品も供給した実績がある。年商およそ1億円。
(2017/12/23 07:30)