[ オピニオン ]
(2017/12/29 05:00)
地震や津波の発生は止められない。しかし、発生をできるだけ早く知って被害を最小限に食い止めることが重要である。
マグニチュード7以上という巨大地震の10%以上が日本で発生している。近年では1995年の阪神大震災、2011年の東日本大震災、16年の熊本地震などが大きな被害をもたらしたことは記憶に新しい。
防災科学技術研究所は阪神大震災を契機に、全国の陸域で地震観測網を整備。さらに東日本大震災を受けて、海域の地震観測網を整備・運用している。
陸域は高感度地震観測網(Hi―net)、強震観測網(K―NET、KiK―net)、広帯域地震観測網(F―net)により、約2000点でさまざまな「揺れ」を観測。16の火山には基盤的火山観測網(V―net)を整備、マグマの移動や噴火などを観測している。
一方の海域は、地震や津波の早期検知・情報伝達を目的に、日本海溝海底地震津波観測網(S―net)を北海道から房総半島沖の海底150カ所に設置。16年4月には、海洋研究開発機構が紀伊半島から室戸岬沖50カ所に整備した地震・津波観測監視システム(DONET)が防災科研に移管された。
七つの観測網は独立して運用されていたが、S―netの完成を機に観測データの統合に着手。先月から「陸海統合地震津波火山観測網」(MOWLAS=モウラス)として運用した。観測網の英文頭文字をとり、「あらゆる地域・現象を網羅するという意味を込めた」と防災科研の青井真地震津波火山ネットワークセンター長は話す。
観測網の統合により、自然現象として分離できない陸・海・火山の情報が一目でわかり、これまでに比べて津波を約20分、地震を20―30秒早く検知できるようになった。
ただ今後も地震は必ず発生するだろう。東日本大震災直後は企業も家庭も防災対策を強化したが、7年近くたち、事業継続計画(BCP)の話題はあまり聞かなくなった。MOWLASの情報活用を含めて、いま一度、危機管理体制を見直したい。
(2017/12/29 05:00)
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