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[ 医療・健康・食品 ]
(2018/1/16 05:00)
慶応義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授は、1回だけ使い廃棄されていた抗がん剤を複数回利用する体制を築くことで、医療費を年560億円削減できると試算した。ガラスや樹脂の容器を使ったバイアル製剤を複数回使用して残薬を廃棄しないよう最適化する「ドラッグ・バイアル・オプティマイゼーション(DVO)」の導入で可能になるとみている。
2016年7月―17年6月の市場規模データと、国立がん研究センター中央病院との共同研究で得た各薬剤の廃棄率を使い、抗がん剤のバイアル製剤の廃棄額を同738億円と算出。DVO導入に必要な閉鎖式接続器具の費用や無菌製剤の処理料を引き、医療費削減効果を同560億円と推計した。抗がん剤の市場拡大や高額化で、15年7月に試算した約319億―410億円を約36−75%上回った。
従来、バイアルを一度開封すると菌が混入するリスクがあったが、最近は閉鎖式接続器具の技術開発により開封後もバイアル内の無菌状態を維持できるようになった。だが米国でDVOが浸透しつつあるのに対し、日本での導入は少ない。
岩本特任教授は医療費抑制が求められる中、「DVOは重要な施策の一つ。ただ医療機関が行うには十分な安全性を担保するルールが必要」とみる。厚生労働省が17年11月に「注射用抗がん剤などの適正使用と残液の取扱いに関するガイドライン作成のための研究」を始めており、その成果に注目している。
(2018/1/16 05:00)