[ オピニオン ]
(2018/1/23 05:00)
「チェスは知恵の試金石」(ゲーテ)、「チェスは精神の訓練場」(パスカル)―。歴史上の偉人が言ったように、昔からゲームは知性の象徴だった。単なる娯楽ではなく、人生を豊かにする触媒ともとらえていたのだろう。
昨年は人工知能(AI)と人間の知性の対決が幕を閉じた年だった。チェスやオセロに続き、将棋や囲碁の世界でも名人や世界最強棋士が相次いで敗れた。人間を倒した米グーグル系「アルファ碁」の開発者は「人との対局はこれを最後とする」と宣言した。
その後、同社はプロ棋士の棋譜を学ばずに自己対局だけで学習していく「アルファ碁ゼロ」を発表。人の棋譜を学びながら強くなる従来型AIに100戦全勝し、「ゲームAI」の研究は新時代に突入した。
ルールが明確で勝敗のあるゲームは、AIの能力を測る重要な指標になる。だが欧米や中国がゲームAIの研究に巨費を投じる一方で、日本は依然として「サブカルチャー」「イロモノ」などと学術的な地位が低い。
AIに対して人間らしさとは「遊び、楽しみ、創造する」ことだろう。ゲームの本質を見抜き、単なる娯楽ととらえるなかれ。これまでと同様、未来のビジネスは遊びの中から生まれるに違いない。
(2018/1/23 05:00)