[ 金融・商況 ]
(2018/2/10 12:30)
投資の新たな形として貸付型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)が注目されている。ソーシャルレンディングサービスの比較サイトを運営するクラウドポート(東京都渋谷区、藤田雄一郎社長、03・4577・0127)によると、2017年のソーシャルレンディング国内市場の規模は前年に比べて2.5倍増の1316億円で、この1年で急拡大。藤田社長は「複数の上場企業が業界参入を表明するなど、今年も成長が期待できる」とみる。
相次ぐ参入事業者
ソーシャルレンディングは、個人投資家からインターネットを通じて小口の資金を集めて大口化し、資金を求める企業に融資する仕組み。そこで得た金銭的なリターンを出資者に分配する。事業者はいずれもファンドという形で資金を集めている。maneo(マネオ)、SBIソーシャルレンディング、クラウドバンクなどが知られている。
クラウドポートによると、国内のソーシャルレンディング市場の規模は、14年に143億円とわずかだったものの、投資の新たな形としてソーシャルレンディングの認知度が徐々に高まり、15年に310億円、16年に533億円と急速に拡大。そして、早くも17年に1000億円を超えた。
背景には、参入事業者が一気に増えた状況がある。17年にアップルバンク、レンデックス、ポケットファンディング、クラウドリアルティが相次いでソーシャルレンディングの取り扱いをスタート。さらに不動産ポータルサイト「ホームズ」を運営するライフル、不動産ファンド運営のケネディクスがこの分野への参入を表明している。
広がる投資の選択肢
こうした中、事業者が取り扱うファンドの種類が増え、投資家が許容するリスクの度合に応じて、さまざまなファンドを選べるようになってきている。クラウドポートによると、「当初、主に不動産に関する案件を取り扱う事業者が目立っていたが、再生エネルギーや海外といった案件の種類も増えている」。
海外のローンに特化して投資するクラウドクレジットは、3月中ごろにも再生可能(リニューアブル)エネルギー事業者へのローンに融資するファンドを組成し、販売をスタートする。この分野でのファンド組成は同社として初めてで、同社の杉山智行社長は今後、ファンドのラインアップを充実し、投資家の選択肢を広げることで、元本割れなどのリスクを避けるための分散投資をしやすくする計画だ。
ファンドを募るときに提示される期待利回りの平均値が、ソーシャルレンディング業界内で上昇傾向にあるのも、市場拡大に拍車をかけていそうだ。クラウドポートの試算では、17年の業界全体の期待利回りは年率8.40%(税引き前)と前年比プラス0.3ポイント。「新規参入事業者が顧客獲得のため、自社の利益を少なくして投資家の登録を促している」との見方が業界内にある。
ソーシャルレンディング市場は注目されているとはいえ、あくまでこれから発展していく市場だ。ソーシャルレンディングを手がける事業者は中小企業が多く、「倒産や不祥事があると、ソーシャルレンディングそのものの信用に傷がつく事態にもなりかねない」と関係者はいう。ソーシャルレンディングが一過性のブームにとどまるか、それとも貯蓄から投資への大きなうねりになるか。今後の動きが気になるところだ。
(2018/2/10 12:30)