[ オピニオン ]
(2018/2/27 05:00)
古代中国の春秋時代に「呉」と「越」は南方の覇権を争った。兵法書の『孫子』は、そんな敵同士でも同じ船に乗り合わせ、嵐に遭って転覆しそうになれば普段の恨みを忘れ、互いに助け合うだろうと指摘しているそうだ。「呉越同舟」は現代でも良く使う。
宅配便市場で激しい戦いを繰り広げているヤマト運輸と日本郵便が、宮崎県で共同輸送を始めた。西米良村と西都市の間約50キロメートルを運行する宮崎交通の路線バスに「宅急便」と「ゆうパック」を混載して運ぶ。
テレビ番組の“路線バスの旅”のファンならうなずくだろう。過疎地は乗客の減少と運転手不足で公共交通機関の維持が難しくなっている。ヤマトと日本郵便は自社便を出さなくて済み、経営が厳しい地方のバス会社は収入が増える。「一石二鳥」の上に、地元住民も喜ぶ。
類似の例は他業界でも起きている。ビール系飲料で激しいシェア争いを続けるアサヒとキリンは昨年、関西―北陸間で鉄道による共同輸送を開始した。さらに北海道でもサッポロ、サントリーを加えた4社で共同輸送を始めた。
ライバル企業同士が今後も商品開発や価格競争では火花を散らすことに変わりない。呉越同舟はまた、「同床異夢」でもある。
(2018/2/27 05:00)