[ オピニオン ]
(2018/3/6 05:00)
労使が激論の末、ようやく合意した働き方改革を後退させてはならない。裁量労働制を巡る混乱を、日本が目指す労働法制について、国民の共通認識を深める契機とするべきだ。
安倍晋三首相は、今国会に提出予定の働き方改革関連法案から裁量労働制の対象拡大を削除するよう指示した。労働時間を巡る厚生労働省の不適切な調査が発端だ。野党は、年収の高い専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」も切り離すよう求めている。産業界には、首相の看板政策である働き方改革が骨抜きになることへの失望が広がる。
今回の法案のベースには、2017年3月に経団連と連合が合意した働き方改革実行計画がある。残業時間の上限規制や、非正規社員の待遇改善に向けた「同一労働同一賃金」を進めると同時に、産業界が求める「時間に縛られない多様な働き方」を実現するはずだった。
厚労省の調査はずさんのそしりを免れない。だがこれで改革が骨抜きになってしまえば、あまりに失うものが大きすぎる。
人口減が進む日本にとって、生産性向上と人的資源の活用は経済成長に不可欠だ。世界は価値創造を競う時代に入ったのに、日本だけが均一に時間をかけることを前提とした硬直的な制度のままでは戦えない。
意欲と能力のある人ほど、与えられた条件下で最大限の成果を発揮する効率的な働き方に誇りを抱き、成果が正当に評価されることを志向する。残念ながら今の労働法制は企業側の意識変化に追いついていない。
言うまでもなく、過剰な業務の押しつけや結果として長時間労働を招くことはあってはならない。運用を誤れば危険だという不安は残るだろう。
だからこそ国会論戦で期待されたのは、働き方改革の副作用についても議論を尽くし、幅広い層の共通理解を得ることだった。改革を単に「労働時間の短縮」に終わらせてはならない。欧米に劣後する日本の生産性を高めるという原点に立ち返り、「多様な働き方」実現の道を探ってほしい。
(2018/3/6 05:00)
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