[ ICT ]
(2018/3/23 05:00)
定型業務の自動化により業務効率化を実現する「RPA(Robotic Process Automation)」が今、注目を集めている。これに人工知能(AI)を組み合わせると“働き手”としてどう進化していくのか。
アビームが描く「5段階からなるRPAの進化」
「企業にとってRPAの導入はデジタル化に踏み出したことを意味する。今後、RPA導入の有無が企業のデジタル化に大きな格差をもたらすことになるのではないか」――。アビームコンサルティングの安部慶喜 戦略ビジネスユニット執行役員プリンシパルは、同社が先頃開いたRPAについての記者説明会でこう語った。
RPAは今、働き方改革や少子高齢化といった社会的なニーズを受けて幅広い業種に導入が広がっている。さらに、このRPAにAIを組み合わせると、まさに万能な働き手に進化するとの見方がある。その進化の過程を知りたいと思っていたところ、アビームの安部氏が会見でそれを1枚の絵にして説明してみせた。
下の【図】がその1枚の絵である。非常に興味深い内容なので、安部氏の説明に基づいて以下に紹介しておこう。
まず、この【図】のタイトルに「アビームの考える次世代型デジタルレイバーへの進化」とあるが、デジタルレイバーは「仮想知的労働者」を意味し、つまりはRPAそのものを指している。
【図】の構成として、左から右への流れが進化の過程である。まず最も左側の「ステージ1、ベーシック」が今まさに注目され、普及が進みつつあるRPAの姿である。ルールエンジンや構造化データ認識をコア技術に、PC上のルール化された定型業務の自動化を実現。PC上の一部定型業務効率化を効果として挙げている。
その1つ右横の「ステージ2、コグニティブ」は、一部の先進企業で実用化され始めた段階だ。RPAと非構造化データ認識技術を組み合わせ、紙や画像などの処理を含む定型業務の自動化を実現する。これによって、PC上の定型業務から解放されるとしている。
「RPA+AI」で自ら業務遂行の意思決定も可能に
また、その1つ右横の「ステージ3、インテリジェンス」から右側は、現時点で存在しない領域である。ただ、ステージ3については技術的に実現可能というのがアビームの見解だ。具体的には、RPAと弱いAI、すなわち特定業務を遂行する特化型AIをコア技術とし、例外対応を含めた限定領域での非定型業務の自動化を実現する。これにより、意思決定の精度向上や合理化を図ることができるとしている。つまりは「RPA+弱いAI」で、自ら意思決定が行えるようになるというわけだ。
「ステージ4、エボリューション」の段階では、RPAと強いAI、すなわち人間と同等の知能を持つ汎用型AIをコア技術とし、自動化対象プロセスの分析/考察/自律的改善・進化が可能になるとしている。つまりは「RPA+強いAI」で、自ら成長していくことができるというわけだ。
最も右側の「ステージ5、アンドロイド」になると、RPAと物理的身体、すなわち実空間で活動可能なボディをコア技術とし、実空間での作業を含む業務全般を遂行できるようになるとしている。安部氏によると、「この段階になると、人間より優れた身体能力と知能を兼ね備えたアンドロイドが、あらゆる仕事を行えるようになる」とのこと。ただ、この段階はまだ空想の話のようだ。
さて、こうした説明を聞いて筆者が感じたのは、「RPA+AI」という働き手は人手不足を緩和してくれる一方、人の仕事を奪う面も出てくるだろう。要はこの働き手を経営者がどうマネジメントしていくか。その点がますます問われることになりそうだ。
(隔週金曜日に掲載)
【著者プロフィール】
松岡 功(まつおか・いさお)
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。危機管理コンサルティング会社が行うメディアトレーニングのアドバイザーも務める。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年生まれ、大阪府出身。
(2018/3/23 05:00)