[ オピニオン ]
(2018/3/27 05:00)
携帯電話や電子メールなど早くて便利な連絡手段が普及した。半面で対話が減り、職場に“指示待ち族”が増えている。東京ガス埼玉支社長の阿久根謙司さんは「自分で見て考えて動く人を育てるにはコーチングが有効」と説く。
2011年から4年間、プロサッカー・FC東京の社長を務めた。就任時はJ2転落直後。「ぬるい雰囲気だった。誰かがやってくれるという選手の気持ちを変えなくてはと思った」。
その年に優勝して1年でJ1に復帰。原動力となったのが、メンバー一人ひとりに自発的な行動を起こさせる“阿久根流コーチング”だ。極意は「結果を怒るより経過を承認すること」「耳を傾け、気持ちに共感し、否定せずに聴く」姿勢だという。
サプライズ演出もした。大事な試合の前、内緒で家族を集めて選手と引き合わせた。夫や父の勇姿に涙する人たちに「私たちは上司と部下の関係ではなく、仲間」と説いた。
幼少期から野球に親しみ、早大で主将、社会人野球の東ガスでは監督を務めた経験も。リーダー論でもある阿久根さんの講演を聞いたある経営者は「現場の気持ちが分からないと人は付いてこないね」と納得する。春の人事異動で新たな部下を持つ管理職も傾聴したい。
(2018/3/27 05:00)