[ オピニオン ]
(2018/3/28 05:00)
後継者難による中小企業の廃業は、日本の産業界の足腰を弱める。神奈川県が先行した事業承継のための官民一体の取り組みに学びたい。
神奈川県は2017年7月、県内の市町村や商工会・商工会議所、金融機関など114機関とともに、中小企業の事業承継を支援する「神奈川県事業承継ネットワーク」を創設した。県内を6ブロックに分け、神奈川産業振興センター(KIP)を事務局に事業承継セミナーや広報活動などを実施している。
中でも事業承継の重要性を説き、経営者に「気づき」の機会を与える「事業承継診断」に力を入れているのが特徴だ。114機関の担当者らが事業承継対策に関心を持つ経営者を直接訪問。わずか5カ月間で目標を上回る2669件を診断した。
こうした取り組みに対して、国も「プッシュ型事業承継支援高度化事業」として17年度補正予算に20億円を計上、全面的にバックアップする方針だ。
背景には経営者の急速な高齢化がある。経済産業省の調査によると、25年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は全国で245万人。うち約半数の127万人が後継者未定だという。
神奈川県事業承継ネットワークが昨年秋に県内中小企業1279社を対象に事業承継の実態を調査したところ、後継者がまだ「決まっていない」企業は38・0%に上った。あらためて事業承継問題の深刻さが浮き彫りになったといえよう。
中小企業基盤整備機構の小川恒正事業承継・引継ぎ支援センター長は「経営者は事業承継することに迷いもあるだろう。まず相談に来てもらうことが重要だ」と説く。特に地域の実情をよく知り、経営者に気づきの機会を生み出す支援機関の役割は大きいといえる。
鈴木信之KIP常務理事は「事業承継問題は経営者個人の問題から地域の経済や社会の重要な課題となってきた」と警鐘を鳴らす。地域経済・雇用の中核を担う中小企業を守るため、官民のさらなる連携と行動力が求められる。
(2018/3/28 05:00)
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