[ オピニオン ]

社説/景況感、2年ぶり悪化−金融市場の安定が回復への条件

(2018/4/3 05:00)

企業収益は好調、雇用環境は良好、実質国内総生産(GDP)は8四半期連続増加と日本経済は緩やかながら成長を続けている。こうした中で企業の景況感は悪化していることが明らかになった。これは一時的なものか、それとも経済の変調を先取りしたものか、今後のカギを握るのは金融市場の動向だ。

日銀が2日に発表した3月調査の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、代表的な指標である大企業製造業の業況判断DIは2年ぶりに悪化した。悪化要因は、年初から上昇を続けた日経平均株価が2月以降、米国の株安に連動して下落に転じたことにある。

加えてFRB(米連邦準備理事会)が利上げ姿勢を示しているにもかかわらず、ドル安が進行するなど世界的に金融市場が不安定化したことにある。急激な円高・株安が進行した時期が賃上げ交渉時期と重なったことも、企業心理を冷え込ませる結果になったようだ。森友問題や財務省の決裁書類改ざん問題で安倍晋三政権の基盤が揺らいでいることも災いしている。

さらにトランプ米大統領が鉄鋼・アルミ製品の輸入に関税を適用する措置を発動したことで、世界経済への悪影響が懸念され、金融市場をさらに不安定にしている。カナダや韓国は関税の適用除外となったが、日本は除外されておらず、対米輸出の阻害要因となるのは間違いない。中国やロシアは米国への報復措置を模索しており、貿易戦争に発展する恐れもある。

短観によると、先行きの景況感はさらに悪化する見込みだ。これは金融市場の先行き不透明感が根強いからに他ならない。今後の円高・株安に対する警戒感が企業マインドを冷え込ませている。企業が力強い景況感を取り戻すためには、金融市場が安定し、円安・株高に戻ることが不可欠だ。

金融市場動向は米国を中心とした海外要因に基づくだけに、安倍政権にできることは限られている。月内に予定される日米首脳会談では日本を輸入関税の対象外にしてもらうよう強硬に交渉してほしい。

(2018/4/3 05:00)

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