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【電子版】マーケティングの出番ですか? (27)「マーケティング施策の生産性向上」

(2018/4/7 05:00)

今回は、マーケティング施策の生産性向上について、国内で数年前から導入機運が高まっているマーケティングオートメーション(MA)ツールを参考に、施策の現状と課題、デジタルマーケティングの進展、そして、その取り組み方などをご紹介します。

マーケティング施策の現状と課題

『新製品情報』には、主に製造業を対象としたBツーB製品情報が数多く掲載されています。当誌に掲載される製品情報は、製造元においては読者の中の潜在顧客が製品情報に気付き、関心を持ち、問い合わせや検討・評価、購入のきっかけになることが期待されていると思います。また、広告掲出企業にあっては、広告が製品の認知度アップを通じて、どれぐらい受注につながるかが気になるところだと思います。

販売促進活動は長年、広告宣伝、展示会の出展、セミナー開催、メール・ダイレクトメール(DM)など、さまざまな施策を通じて潜在顧客の開拓に取り組んできていますが、インターネットの登場以降、新たにWebサイトやソーシャルメディア運営などのデジタルマーケティングが加わりました。

このように、マーケティング施策が多様化し、コンテンツが拡充する一方、意外ですが、【表1】や【表2】に見られるように、マーケティング施策の実施に対して、その費用対効果の評価は十分に行われていないのが現状です。(表は、シャノン「国内BtoBマーケティングの現状と課題レポート2016」調査結果から転載編集)

マーケティング施策の生産性向上には、【販売計画】→【販売促進】>>【営業活動】→【受注】のプロセス(イラストのパイプライン≠漏斗のイメージ)を一貫して管理する枠組みが必要であり、これを支援するツールとしてマーケティングオートメーション(MA)が注目されています。

PDCAを支援するMAツール

MAツールは、インターネット環境におけるeメールやWebサイトの利用履歴(ログ)などのデータを収集し、分析することで各施策を見える化し、【表3】のように、展示会やセミナーの来場者登録やeメール配信から、その後の見込み顧客(リード)管理、各種分析までを可能としています。

米国で2000年初頭に導入が始まったMAツールですが、MarketsandMarketsの調査によれば、2014年の世界のMA市場規模は36.5億ドル(約4300億円)、2019年には55億ドル(約6500億円)と予測されており、一方、2014年の日本の市場規模は、矢野経済研究所によれば168億円となっています。

MAは、以前は困難とされていたデータの収集、管理・分析を可能とすることでマーケティング施策のPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを支援しますが、このことは、従来の予算計画(P)と施策実施(D)に、評価分析(C)と施策改善(A)が加わることを意味しています。つまり、既存業務の生産性向上と新業務の構築を同時並行で行うことが求められます。

オートメーションという言葉には、機械化、自動化、省力化のイメージがありますが、マーケティングオートメーションの核心は、実はPDからPDCAサイクルへの業務革新にあり、これが実現と成功のハードルを高いものにしています。

パイプラインを繋ぐ、緻密で地道な取り組み

ネット通販(ECサイト)を利用している皆さまは、販売(企業)側が自身のサイトの利用頻度や購入履歴の情報をマーケティング(購入機会の創出)に活用しているとお感じだと思います。

現在、販売促進を目的に多くの企業がeメール配信を行っていますが、BツーCに比してBツーBビジネスにおけるeメールマーケティングは、改善の余地が大きいものと思われます。ターゲットが曖昧なメッセージ内容、不定期の配信タイミング、冗長なフォーマットなど、有効であるべき施策が、反対にブランドロイヤリティーを低下させている一因になっている可能性があります。

eメールの開封率やクリック率を改善し、受注に向けてパイプラインを繋(つな)ぐためには、自社製品の顧客層の定義、購買行動、利用動向の分析に基づいた緻密な対応と、地道な取り組みを積み重ねることが肝要です。

信頼性や競走優位は一朝一夕では獲得できず、ここにもハードルが存在します。

マーケティングミックスの展望

最後に、マーケティング業務の“品質”向上の課題についてマーケティングミックスの観点から概観します。

自明のことですが、見込み顧客の多くは、自社のみならず他社の見込み顧客でもあります。そのためマーケティング施策の生産性向上は、現実には、マーケティングミックスの他の要素である「製品力」と「価格」、そして「流通チャネル」とのバランスにおいて達成されることになります。

 顧客体験(ユーザー・エクスペリエンス〈UX〉)やエンゲージメントなど、顧客と製品の関わり方にさまざまな概念が登場していますが、顧客が欲しい「製品」を、適切な「価格」、かつ便利な「購入方法」で提供し、顧客の期待に応え、期待を超える「価値」をもたらすというマーケティング本来の品質向上は、デジタルマーケティングの普及・進展と相まってこれからが正念場となっています。

(『新製品情報』2017年9月号掲載)

(土曜日掲載)

著者紹介

武道 誠芳

株式会社テンプロテクシー代表取締役

(マネジメントコンサルタント)

所属:(株)テンプロクシー にて、コンサルティングサービス、マーケティングサービス、ロボットビジネスを展開

生年:1960年

出身:富山県

学歴:横浜市立大学商学部卒業

経歴:外資系コンピュータメーカー、システムコンサルティング会社、サイパン航空事業への参画後、1996年起業

(2018/4/7 05:00)

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