- トップ
- 医療・健康・食品ニュース
- 記事詳細
[ 医療・健康・食品 ]
(2018/5/16 16:00)
厚生労働省の再生医療等評価部会は16日、大阪大学心臓血管外科の沢芳樹教授らによるiPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の心筋細胞を心臓病患者に移植する臨床研究について、患者への説明文書や研究計画書の内容の一部修正を条件として了承した。iPS細胞を移植する臨床研究は2014年に始まった眼科領域に続いて2番目で、心疾患を対象とした研究は初めて。審査結果を受け沢教授は「18年度中には第1例目を始めたい」と述べた。
研究の対象となるのは、血管が詰まることなどが原因で心臓の筋肉に血液が届かなくなる「虚血性心筋症」により、重症心不全となった患者。3例の対象患者に対し、自分の細胞ではない他家(他人)由来のiPS細胞から作った心筋細胞シートを心臓に移植し、安全性を評価する。
他家のiPS細胞を移植した場合、細胞の生着を維持するために免疫抑制剤の投与が必要となる。今回の審議では、免疫抑制剤の投与理由や投与期間について、患者に分かりやすい文言に変更するよう求めた。
研究計画書の内容では、心臓の血液を送り出す機能の指標「左室駆出率」の基準を40%(正常値50%以上)としていたが、すでに市販されている他の再生医療製品の適応基準とそろえ、35%未満にする変更が盛り込まれる。
今後、阪大から文言が修正されたものが提出され、厚生労働相の承認を受けて治療を開始する。
新しい治療法確立に期待 京大・山中教授
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の山中伸弥所長は16日、大阪大学の沢芳樹教授らによる、iPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の心筋細胞を心臓病患者に移植する臨床研究計画が厚生労働省の専門部会で了承されたことを受け、「CiRAの再生医療用iPS細胞ストックを使う二つ目の臨床研究となる。新しい重症心筋症に対する治療法として確立されることを期待するとともに、慎重に経過を見守りたい」とコメントした。「他のさまざまな疾患にもストックを使ってもらえるように、より良い細胞を十分に提供していきたい」とも述べた。
(2018/5/16 16:00)