[ オピニオン ]
(2018/6/25 05:00)
政府が中小企業の事業承継を後押しする取り組みを強化している。後継者難の優れた中小企業が廃業に陥れば、雇用や技術、ノウハウがなくなるためだ。また、サプライチェーンにも支障が生じ、日本の産業界の競争力にも影響を及ぼす恐れがある。中小企業の経営者は政府の事業承継支援策を活用し、世代交代に積極的に取り組むべきだ。
経済産業省の調査によると、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は全国で245万人。うち約半数の127万人が後継者未定だという。この問題を放置すれば、今後10年間累計で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる恐れがある。日本企業の9割を占める中小企業の高齢化問題は、喫緊の課題と言える。
政府も手をこまねいているわけではない。経産省・中小企業庁は事業承継を促すため、17―21年度までの5年間を事業承継政策の集中実施期間に位置付けており、税制改正や補助事業などを通じて抜本的な支援策を整備した。
特に、4月からの事業承継税制では、10年間の時限措置として、承継した非上場株式の全額を納税猶予することを決定。承継時の相続税・贈与税の現金負担をゼロにした。また、従業員の雇用要件を実質的に撤廃したり、複数の株主から最大3人までの後継者への承継を税制対象にしたりするなど、円滑に進める措置に取り組んだ。
売上高3億円以下の小規模な企業に対してもM&A(合併・買収)支援を通じて承継を喚起している。小規模企業を対象にしたM&Aは手数料が少なく、取引案件が増えにくいためだ。そこで企業庁は19年度から仲介業者や地域金融機関などが企業情報をやりとりできるデータベース(DB)の運用を始める。公的窓口「事業引継ぎ支援センター」が持つ情報を中核に、仲介業者など民間側が情報を登録したり、検索し閲覧したりできるようにする。
経営者も今を事業承継のチャンスととらえ、充実した政策を活用すべきだ。
(2018/6/25 05:00)
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