[ オピニオン ]
(2018/8/9 05:00)
政府は、使い捨てプラスチックの削減や再利用を徹底する総合戦略「プラスチック資源循環戦略」を2019年6月末までに策定する。国際問題化しているプラスチックゴミによる海洋汚染対策で、すでに欧州の国や企業は規制に乗りだした。政府は早急に具体策を示すべきだ。
欧州連合(EU)は1月、使い捨てプラを30年までに全廃する「プラスチック戦略」を公表した。5月末には再利用できないプラ製食器の使用を禁止する案を加盟国に提案。英国は19年からストローやマドラーなどの販売を禁止する方針だ。
背景に海洋ゴミ問題がある。飲料容器やレジ袋などの使い捨てプラ製品が海へ流出し、波風で砕かれてマイクロプラスチックと呼ばれる微少なゴミとなる。マイクロプラは有害物質を吸着して魚や貝に蓄積されるため、生態系への悪影響が懸念されている。魚介類を摂取した人への健康被害も心配され、EUはマイクロプラの発生源をなくそうと規制を強めている。
経済的インパクトからも規制が必要となった。欧州で資源循環の議論を主導する英エレン・マッカーサー財団によると、1回しか使われないプラ包装材の廃棄量は膨大で、経済価値にすると年800億―1200億ドルが捨てられている計算になる。巨額の損失を回避しようと、戦略を打ちだした。
一方、日本の動きは鈍い。6月にカナダで開かれた先進7カ国主要国首脳会議で、具体的な対策を促す「海洋プラスチック憲章」が採択されたが、日本は米国と署名しなかった。産業界への影響を懸念したためだ。
マクドナルドやスターバックスコーヒーが使い捨てプラの使用廃止を打ち出すなど、海外では企業の自主規制が始まった。この動きが広がると、使い捨てプラを扱う企業は取引先から排除されるだろう。
日本政府が方針を明確にしないと、企業が対応しづらい。プラスチック資源循環戦略で、どこまで具体策を打ち出せるかが課題だ。国際展開する企業は海外規制に対応しないと、市場から閉め出される。
(2018/8/9 05:00)