[ オピニオン ]
(2019/3/5 05:00)
2月の月例経済報告で、政府は生産の基調判断を3年4カ月ぶり、企業収益の判断を2年8カ月ぶりに引き下げた。いずれも米中貿易摩擦、中国経済の減速の影響が大きい。とはいえ、中長期的に見て、中国が魅力的な巨大市場であることに変わりはない。足元の景気減速を見て投資を手控える向きもあるが、将来も見据えた判断が肝要だ。
月例報告では、生産の判断を「緩やかに増加している」から「一部に弱さがみられるものの、緩やかに増加している」に下方修正した。中国経済の減速などを受け、スマートフォン向けを中心にICT(情報通信技術)関連需要が一服。海外向けの電子部品や生産用機械が伸び悩んだ状況が背景にある。
企業収益は「改善している」から「高い水準にあるものの、改善に足踏みがみられる」に判断を変えた。2019年3月期見通しを下方修正する企業が相次ぐ状況を踏まえた。当社の調べでは、主要上場企業128社のうち、4分の1が米中貿易摩擦、中国経済減速の影響で下方修正を余儀なくされている。
通商をめぐる米中両国の争いは、次世代ハイテク技術の主導権争いの様相を呈し、長期化が予想される。こうした中、経営者らが投資に慎重になるのは無理もない。その一方で、中国政府がこのまま底の見えない泥沼に、自国経済がはまり込んでいくのを指をくわえて見ているはずがない。
すでに中国政府は中小企業減税、公共投資の拡大策などを矢継ぎ早に打ち出している。対策の効果などを想定し、中国景気が19年10―12月期に上向くといった予測もエコノミストに相次いでいる。日本企業はこの機会を逃さず、景気回復の“果実”を手に入れたいが、それには先んじて投資している企業が有利なのは自明の理だ。
競争相手は日本企業だけではない。中国企業の技術力も急速に向上しているという。投資をためらっている間に商機を失ってしまう恐れもある。対中投資には景気の足元だけでなく、中長期などを視野に入れた総合的な判断が必要になる。
(2019/3/5 05:00)
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