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第44回発明大賞、本賞にライフ

(2019/3/7 05:00)

日本発明振興協会(東京都渋谷区、原昭邦会長、03・3464・6991)と日刊工業新聞社共催の「第44回(2018年度)発明大賞」に26件の発明が選ばれた。発明大賞は発明考案を通して産業の発展や国民生活の向上に寄与した資本金10億円以下の中堅・中小企業や個人、グループに贈られる。表彰式は13日に東京都港区の明治記念館で開く。

【発明大賞 本賞】

唾液分泌量を評価する口腔(こうくう)粘膜湿潤度検査機器=ライフ(古川誠代表取締役ほか2人)

口の中の湿潤度を調べて口腔内乾燥症の診断や予防に役立つ口腔内水分測定器。水分量の違いによる誘電率の変化をセンサーで検出する静電容量式技術を導入した。センサー部位を口腔粘膜表面に数秒間押し当てることで湿り具合を数値化できる。唾液(だえき)腺の慢性的な炎症から乾燥症状となる自己免疫性疾患の一種「シェーグレン症」や「口腔機能低下症」の診断などに使える。

従来方式の測定用のガムやガーゼで唾液を吸い取って重量の増加分を測定する方法では、評価が難しかった。(ライフ=埼玉県越谷市、048・990・8201)

【発明大賞 東京都知事賞】

中赤外顕微鏡用高機能ダイヤモンドATR対物鏡=エス・ティ・ジャパン(中川孝郎社長ほか2人)

試料に照射した赤外光の全反射光から試料表面を調べる顕微鏡の部品で、試料の明瞭な観察と観察部位の正確な測定ができるダイヤモンド全反射減衰法(ATR)対物鏡。照明用可視光を透過するダイヤモンド結晶を使い、試料の観察位置と測定位置を高い精度で一致させた。従来、可視光を透過しないATR結晶での試料観察には、複雑な装置が必要だった。

画像の解像度は10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下を実現した。観察しながらの測定も可能。(エス・ティ・ジャパン=東京都中央区、03・3666・2561)

【発明大賞 日本発明振興協会会長賞】

密着締付式サイズフリー容器運搬袋=ミヤゲン(宮元武壽会長ほか1人)

1枚のポリエチレンフィルムで一体形成した容器運搬用ビニール袋。コーヒーカップなどの中身をこぼさないように保持して手提げ部分を握って運べる。ビニール袋の内部にはスポット溶着が施され、容器を押し込むことで必要な箇所のスポット溶着部が剥離。容器に密着し締め付けることで安定的に保持できる。

現在は石油化学樹脂製だが生分解性樹脂を材料とすることで環境面での優位性を見いだせる可能性がある。飲用カップホルダーなどの既製品に対応しており、今後複雑形状の容器への利用も期待できる。(ミヤゲン=福井県敦賀市、0770・21・0038)

【発明大賞 日刊工業新聞社賞】

金属切削屑粉砕圧縮装置=クリエイトエンジニアリング(代表取締役・栗田省三氏)

切削加工で発生する金属の切りくずを破砕し固形物に成形し処理する小型・軽量切りくず破砕圧縮機。破砕刃を持つ破砕機を投入口直下に設け、切りくずを破砕し圧縮することで、カール状の切りくずでも付加装置無しで処理できる。従来の切りくず圧縮機の圧縮室に対して、前段に破砕機を設けることで小径の圧縮室にすることが可能。切りくずの移送機構や破砕機構などの動力源も合理化。同規模の切りくず圧縮機と比べ、大幅な軽量化と省スペース化を実現した。(クリエイトエンジニアリング=愛知県岡崎市、0564・58・8718)

【発明功労賞(50音順)】

高精細ディスプレイ向け高精度・極微量インクジェット塗布装置=AIメカテック(社長・阿部猪佐雄氏ほか2人)

微量で均質に液晶材料を塗布できる高精細ディスプレー向け塗布装置。インクジェットプリンター方式を採用し、従来方式の5倍の塗布生産性を実現した。高粘度で広がりにくい液晶材料の塗布が可能。カメラで液滴の粒を観察し、塗布ヘッドの目詰まりを素早く掃除することで、生産性を向上できる。テレビやスマートフォンの画面の高精細化、量産化などが期待される。

従来方式では液晶材料の広がりや色むら、滴下痕などで生産性を上げられなかった。(AIメカテック=茨城県龍ケ崎市、0297・62・9111)

精密温度調整装置及び精密温度調整方法=オリオン機械(開発本部専務取締役開発本部長・吉岡万寿男氏ほか3人)

1台の圧縮機で冷却と加熱を同時に制御できる温度調整装置。独立した冷凍サイクルで精密な温度制御ができ、従来必要だった加熱用ヒーターが不要で省エネルギー化を実現した。半導体関連製造装置や精密加工装置などに活用されている。

従来、半導体製造装置などの精密温度制御では、目標とする温度以下に冷やした後、ヒーターで加熱する必要があった。加熱用のエネルギーが装置の効率を落とす原因となっていた。(オリオン機械=長野県須坂市、026・245・1230)

検体の検査方法、検体の検査装置及び検体の検査キット=協和医療器(専務・小野寺俊弥氏ほか1人)

食品製造現場での大腸菌・大腸菌群などを検出する検査方法と装置。今までは自動判定が困難であった公定法である「ダーラム管」による検査で自動判定・自動記録を実現した。ポリスチレン製ダーラム管の開発と近赤外線センサーを用いた自動検査装置の開発で、大腸菌・大腸菌群などが成長時に作る微量のガスでも迅速かつ確実に検出が可能。

検査は、ディスポタイプのあらかじめ液体培地の入ったダーラム管入り試験管に、検体液を入れ自動検出装置に差し込むだけ。自動で検査判定・記録・異常時の通知をする。(協和医療器=東京都中央区、03・6228・7244)

手術トレーニング臓器モデルの開発=サンアロー(新潟工場要素開発課主任・桑原豊氏ほか1人)

内視鏡手術の手技訓練用の臓器モデル。ポリビニルアルコールのゲルを材料に発泡構造を付けることで、電気メスでの切除時の剥離の感覚、局所注射時の粘膜の局部的な膨らみなど生体に近い質感を再現した。手術手技に必要な臓器の質感を忠実に再現し、人体に近い感覚での訓練が可能。内視鏡医の手術手技レベルの向上が期待される。

内視鏡治療には手技訓練が必要だが、動物組織や献体などでは訓練が難しい。他の生体モデルでは生体の質感を再現しきれていなかった。(サンアロー=東京都中央区、03・3552・5981)

刃物台への高圧クーラント液分配装置=トクピ製作所(社長・森合主税氏ほか1人)

数値制御(NC)旋盤での生産性向上につながる高圧クーラント液(冷却水)供給機構。工具の刃先の近くにクーラント液を高圧で噴出させることで、切粉を分断しながら切削し切粉の巻き付きを防ぐ。クーラント液の噴出圧力は7メガ―30メガパスカル(メガは100万)。刃物を効率良く冷やすことで、工具の長寿命化や加工効率の向上などが期待される。

従来のNC旋盤ではクーラント液の噴出圧力が7メガパスカルで、切粉のへの巻き付きや工具の冷却不足などによる短い停止が起きていた。(トクピ製作所=大阪府八尾市、072・941・2288)

ハンドル操作が容易な手元減圧弁=日本精器(生産推進部開発課課長・伊達則行氏)

圧力調整ハンドルにかかる荷重を小さくし、圧力調整時の設定を軽いハンドル操作で行える空気圧工具に使える圧力制御弁。エア工具に直接取り付け、用途に応じた圧力に調整する。1メガ、1・5メガ、2・5メガパスカル(メガは100万)の入り口の圧力に対して調整ができる。

エアコンプレッサー(空気圧縮機)からはき出された圧縮空気を動力源とするクギ打ち機や、回転と同時に打撃を加えボルトやナットを回す「インパクトレンチ」などの用途に使える。(日本精器=大阪府八尾市、072・923・0481)

見えなかったすきま時間の化学反応が見える高速分光技術=ユニソク(分光・制御事業部取締役部長・中川達央氏ほか2人)

今まで見えなかった時間範囲での化学反応を可視化する高速分光技術。2種類の光を利用し、異なるタイミングで光照射と検出をくり返す。データ取得後、検出信号を重ね合わせることで時間的に連続なデータを作成。これまで困難だった100ピコ秒レベル(ピコは1兆分の1)の時間分解能とミリ秒レベルの測定時間の計測を可能にした。

材料開発や化学反応の仕組みの解明に役立つため、太陽電池や発光デバイス、創薬などの分野での活用が期待される。(ユニソク=大阪府枚方市、072・858・6456)

【考案功労賞(50音順)】

注水式回転ブラシを用いたミスト・粉じん類捕集装置=アンレット(技術部参事・加藤利明氏ほか2人)

金属を含む粉じんを吸い込む装置。吸い込んだ粉じん混じりの空気が注水された回転ブラシを通過。水と遠心力で粉じんと空気を分離する。従来にない湿式と乾式を融合し、粉じんの分離室と回収室を重ねた構造で小型化も実現。注水と遠心力でブラシに付着した粉じんが自動的に除去される機能も備えた。フィルターが不要になりメンテナンスも最小限で済む。(アンレット=愛知県蟹江町、0567・95・1211)

段取りで生産を止めない旋盤用クイック爪=シンセテック(代表取締役・石川禎章氏)

旋盤などの工作機械で、加工対象の材料を固定するチャックに取り付ける爪。側面のボルト一つで爪を強固に固定できる。表面にボルトや穴がなくフラットで、操作性に優れ迅速に作業を行える。

爪の交換作業の時間短縮や位置決めも容易。表面をフラットにしたことで清掃が楽になり、自動・無人運転中の切りくずによる加工不良を減少する。(シンセテック=千葉県柏市、0297・82・3311)

加湿冷却モジュールを用いた耐候性試験機=スガ試験機(社長・須賀茂雄氏ほか1人)

材料の耐久性を調べる耐候性試験機に取り付ける加湿冷却モジュール。試験機の外気導入口に取り付け、外気を入れる際に、温度や湿度を調整し、装置内の急激な温度変化と湿度低下を防ぐ。吸水性材料を使い水の蒸発潜熱を利用した加湿冷却モジュールで、温湿度制御と省エネルギーの性能に優れる。空気の排出量と戻し量を調整する空調弁も設置した。(スガ試験機=東京都新宿区、03・3354・5241)

皮膚表面及び皮膚内部を観察するための装置=デルマ医療合資会社(代表社員・篠崎俊氏)

皮膚組織を観察する装置。皮膚の表面の反射光と内部の散乱光を分けて観察するものをダーモスコープと呼び、散乱光を分ける装置を従来の直線偏光から円偏光へ改良、小型化した。皮膚内部からの散乱光を分けて観察可能で、病変部が分かりやすい。カメラレンズに簡単に取り付けられ、病変の大きさに合わせて使い分けもできる。(デルマ医療合資会社=横浜市南区、045・731・2584)

無線綴じ冊子の製本方法=中村印刷所(社長・中村輝雄氏)

180度水平に開くノートの製造法。背の部分ののり付けなどの改良で、どのページを開いても180度水平に開く。半ページを切り取った後でも残りのページが剥がれず、レポート用紙としても使える。両面が平らになるため、定規が使いやすく文字も書きやすい。両面のコピーも簡単。連続的に両ページを使える。(中村印刷所=東京都北区、03・3916・1444)

簡易かつ効果的な水田畦の機能回復工法(モラン工法)=野原工業(工事部執行役員工事部長・竹田実氏ほか1人)

水田周囲のあぜからの漏水を防ぐ工法。あぜに無機鉱物「ベントナイト」を注入して、遮水壁層を形成する。金属や樹脂の遮水板を並べる方法と比べ、時間が短縮できる。安価で効果の持続期間も延びた。掘削プレートをあぜに打ち込み、できた溝にベントナイトを注入するため、掘り起こしや埋め戻しの手間も不要になる。(野原工業=富山県南砺市、0763・82・0010)

水位等を検知し太陽光を電源とした水門扉の自動開閉装置=橋詰薫氏

ソーラーパネルとモーターで緊急時に河川の水門を自動で閉める。電源は太陽光のみで外部電源が不要。一回の充電で複数回開閉が可能。水位計や地震計と連動できる。遠隔操作で水害対策ができ、現場の作業が不要なため、使用者の安全が確保できる。水位計と地震計を一体化して自動化したことで、コストも大幅に削減できた。(橋詰薫氏=長野市、026・283・0365)

新加圧構造を有するコンパクトで安全な混練機(ミキサー)=フジエンヂニアリング(代表取締役・三浦晃義氏)

素練したゴムと配合薬剤を混練りする機械。油圧シリンダーで加圧、旋回式でふたをする。垂直移動の加圧蓋方式と比べ天井が低い場所にも設置できる。槽内の洗浄時には稼働体は油圧シリンダーの作動により回転して待機時はロッドが縮小、加圧蓋は湾曲シリンダー部の上方から外れて側部に位置する。(フジエンヂニアリング=福岡県久留米市、0942・26・7400)

堅型ごみ焼却炉における燃焼用空気の供給方法及び竪型ごみ焼却炉=プランテック(会長・勝井征三氏)

廃棄物を炉底に厚く積み上げ、炉下から燃焼空気を供給する竪型火格子式ストーカ炉。炉底に廃棄物層を形成し、理論燃焼空気量の2分の1以下の一定量の1次燃焼空気によって廃棄物を熱分解して炭化物と可燃ガスに燃料化した後完全燃焼させる。そのため、燃焼量が安定し複雑な燃焼制御を必要とせず、さまざまな廃棄物を完全燃焼できる。(プランテック=大阪市、06・6448・2200)

【発明奨励賞】

3次元開口機構型室内換気口=井場設計事務所(代表取締役・井場正治氏)

室内の壁面などに使われる通気口のベンド。開閉するふたを円形と楕円(だえん)を試作した。部品も少なく、組み立てが不要で低コスト化を実現した。階段状の仕掛けを使っており、ダイヤルを回すと開口面積を16段階で細かく変化させることができる。取り外しが簡単で、フィルターの交換も容易にできる。(井場設計事務所=東京都台東区、03・3835・0995)

おしゃべり電球=ツインエコ(社長・早田孝司氏)

人感センサーとスピーカーを取り付け、おしゃべり機能を持った電球。人が来るとセンサーが反応して点灯。好きな言葉を登録しておくとしゃべる。光と音を使った自動案内などに使える。従来はスピーカーと人感センサーが別々だった。音声データも記憶できる。全ての機能を電球自体が備えており、小型化を実現した。(ツインエコ=東京都江戸川区、050・3786・2700)

ひょうたん型回転板磁気研磨機=ヤエス軽工業(専務取締役・山崎次雄氏ほか1人)

磁石円盤の形状や挙動を改良した磁気研磨機。従来の磁気研磨機は、磁石が円盤の中心になく、中心部と外周部で研磨能力にむらが生じる問題があった。回転板を複数使い自転と公転をする設計にした。回転盤の形状もひょうたん形にして回転中心に磁石が通るようにした。磁石の運動領域が広がり、研磨むらを抑制できた。(ヤエス軽工業=東京都足立区、03・3888・8751)

連続種苗テーピング方法=ユニプラン(代表取締役・高橋正明氏)

生分解性のセルロース素材のテープに球根を等間隔に挟み込んで植える。上下をそろえなくてもいい種子用のものはあったが、本製品では、らっきょうなどのように上下がある球根に対して使うことができ、向きをそろえて植えられる。

テープごと一列に植え付けることができるため、大幅に生産性が向上する。(ユニプラン=松江市、0852・53・0511)

落書き除去剤と除去方法=横浜油脂工業(社長・本多秀夫氏ほか1人)

揮発性の高い溶剤を含有しない落書き除去剤。スプレーで噴霧して一定時間放置後に拭き取って使い、垂れにくい。これまで落書きを落とすには、上から塗るかサンドペーパーで削るなどだった。本製品は揮発性の低い溶剤と水を含有して引火や吸入の危険性が低く、建造物の基材や塗膜を傷付けずに落書きを落とすことができる。(横浜油脂工業=横浜市西区、045・311・4701)

【発明育成賞】

地盤改良工事に伴う六価クロム汚染の防止剤=初野建材工業(代表取締役・初野直樹氏)

地盤改良工事に使われるセメント系固化剤の六価クロムを、三価クロムへ還元して無害化する。これまで、土中の微生物を活性化して六価クロムを還元する方法はあったが、本製品は放線菌ST13株を含む製剤を直接土中に注入して使用する。混ぜるだけで使用でき、微生物の働きを利用するので安全性が高い。(初野建材工業=埼玉県川越市=049・224・5131)

(2019/3/7 05:00)

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