[ オピニオン ]
(2019/3/11 05:00)
東日本大震災の発生から11日で8年となる。十分とはいえないが東北各地で復興が進み、地方創生の先進的な取り組みが生まれている。人口減少や産業基盤の低下に悩む他地域のモデルとして全国に波及させたい。
福島県会津若松市は4月22日、情報通信技術(ICT)産業に特化したビルを開業する。アクセンチュアが200人以上の体制で入居し、データ分析拠点とする。フィリップス・ジャパンも開発拠点として活用する。他にも県内や会津大学発ベンチャー企業も進出する。海外大手と地元企業が同居する拠点は、地方都市では珍しい。
同市は震災による直接的な被害はなかったものの、風評被害に見舞われた。ちょうど地域経済を支えていた半導体工場の縮小もあり、市は労働人口の減少に危機感があった。そこでICTに白羽の矢を立てた。新オフィスへの入居企業が開発した技術を行政の効率化、農業や観光業の活性化に利用する。ICT産業育成と既存産業の活力向上を両立し、工場誘致と違う新しい地域活性化モデルにする。
宮城県女川町は、若者による起業が増えている。伝統技能を採用したギター製造など、地域資源を生かした事業が多い。移住者が増え、起業が街の活力となっている。
女川で復興を支援してきたNPO法人「アスヘノキボウ」は、起業家志望の若者を中小企業の経営幹部として紹介する事業を始める。若者には実務経験を積む機会、中小企業には、人手不足解消になる。“起業の街”となった女川の経験を他の地域にも広げる。
東北で地方創生が動きだしているが、日本財団が全国の17―19歳の男女800人に調査したところ「政府の地方創生がうまくいっている」の回答が4%にすぎない。「うまくいっていない」は37%を占め、理由として「成功事例を聞かない」「活動が有名ではない」が挙がった。
東北の先進的な取り組みを全国で情報共有しないと、地方創生は大きなうねりにはならない。政府や報道機関による継続的な情報発信が求められる。
(2019/3/11 05:00)
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