[ オピニオン ]
(2019/3/21 05:00)
厚生労働省の毎月勤労統計の不適切調査問題に関する不信が払拭(ふっしょく)できない。新たな第三者委員会をつくって、真相を解明し、膿(うみ)を出しきることが第一歩だ。それが国民の信頼回復につながる。合わせて、政策の精度を高めるため、民間が持つビッグデータ(大量データ)などを政府や公的機関が利用する議論を深めていくべきだ。
「何のために税金を使い調査したのか。さっぱり意味がない」。第三者委員会報告書格付け委員会で委員長を務める久保利英明弁護士は8日、日本記者クラブで会見し、特別監察委員会を強く批判した。毎月勤労統計の不適切調査をめぐり、厚労省が第三者委員会として設けた特別監察委がまとめた再調査の報告書について、報告書格付け委員会は5段階で評価し、久保利委員長ら委員9人全員が最低評価の「F」をつけた。これまで20回の格付けで、全員がFをつけたのは、今回が2回目だ。
格付け委がこうした低評価をつけたのは、監察委が独立性や中立性を欠いたことによる。特別監察委の樋口美雄委員長は厚労省の外郭団体のトップを務める。「それだけでも第三者委員会の適格に欠ける」(久保利氏)とし、身内による調査に懸念を表明する。
久保利氏は、第三者委員会について、「その組織のオールステークホルダーのために、事件の真相と真因を明らかにし、再発防止のために会社は何をすべきかを提言するところにある」としている。「事実認定が極めてルーズ」(国広正弁護士)との意見に象徴されるように、特別監察委の報告書から真相は見えない。やはり、“真の”第三者委員会をつくって、真相を究明すべきではないか。
一方、ビッグデータ時代に入り、企業はネットを通じ大量かつ多様なデータを収集・分析している。国の統計も民間協力を得て、政策の精度を高めていく対策をとってはどうか。その際厳格な情報管理も欠かせない。
信頼回復のための真相究明と民間活用による統計という両輪が不適切統計問題の解決の糸口になる。
(2019/3/21 05:00)