[ オピニオン ]
(2019/5/20 05:00)
「姉川クラゲ」をご存じか。びわ湖を臨む滋賀県長浜市を流れる姉川の流域に多く見られることからこう呼ばれる。といっても、びわ湖に生息する水母(クラゲ)ではない。食料問題や環境問題など地球規模の課題を解決すると期待される植物だ。
一般にイシクラゲと呼ばれるネンジュモ科に属する陸棲ラン藻類で、乾燥や貧栄養という極限の条件でも育つ超環境ストレス耐性植物だ。87年前の標本が生き返ったという文献記録があり、水さえあれば岩の上でも生育する。
このスーパー特性は、砂漠緑化や放射能汚染土壌の除染で環境問題を解決する一方で、酸素生産や宇宙農業の土の代用として宇宙開発を推進、国際宇宙ステーションでの実験も行われた。また、生理活性物質が豊富で抗がん性や抗ウイルス性、抗菌性など機能性食品への活用も期待される。
龍谷大学農学部は「姉川クラゲ」を滋賀県の特産品にしようと取り組んでいる。文献やフィールド調査、遺伝子解析、栽培法の確立、食品としての開発と総合的にアプローチする。
実際食用にされていた歴史を突き止め、配合ソバなどの食品開発と成果も多い。期待が大きい「姉川クラゲ」だが、肝心の滋賀県民の認知がいま一つ。しばらく動向を見守りたい。
(2019/5/20 05:00)