[ オピニオン ]
(2019/6/26 05:00)
政府は2019年度の成長戦略実行計画に、地方における交通手段の改革案を盛り込んだ。近年、地方では公共交通網の縮小や高齢ドライバーによる事故などが起き、喫緊の課題になっている。安全な移動手段を確保しつつ、新たな市場の創出にも努めてもらいたい。
人手不足の影響は、バスやタクシー業界にも波及している。ここ数年、自動車運転業務の有効求人倍率は急上昇しており、17年には2・72倍を記録。全職業平均の1・35倍を大きく上回る。特に山間部や過疎地では運転手不足が深刻化しており、バス路線やタクシーの営業エリアが縮小し、住民生活が立ち行かない事態に発展しつつある。
また、高齢ドライバーによる重大事故も相次いでいる。加齢により認知機能に衰えを感じた運転手には、免許証の自主返納を促す対策が不可欠だ。だが一方で三大都市圏以外の自動車依存度は70―79歳で65%、80歳以上で57%もある。地方の高齢者が日々の暮らしを維持するには、自動車は欠かせない。
こうした社会課題に対し有効な解決策となるのが完全自動運転だが、その実現と自動運転車の普及は20年代後半から30年代と予想される。政府は当面の打開策として、19年度の成長戦略実行計画で自家用車を使った運送サービス制度とタクシーの相乗り制度を盛り込み、閣議決定した。
自家用車を使った運送サービス制度は、一般的な第一種運転免許で運送でき、タクシーの少ない山間部などで有効な対策となる。必要な法案を20年通常国会に提出する。一方、タクシーの相乗り制度は、配車アプリやシームレスな移動など新しいビジネスモデルを創出でき、訪日客や観光客の潜在需要も掘り起こせる。道路運送法上の通達改正を19年度中に実施し、来夏には運用する。
地方における移動手段の確保は、待ったなしの状況だ。一方でITなど革新技術を用いた解決策を講じれば、新たな市場の創出にもつながる。政府は、日本の課題を産業界の活力に変える努力をしてもらいたい。
(2019/6/26 05:00)
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