[ 機械 ]

第49回機械工業デザイン賞、アマダとオークマが経産大臣賞に選定

(2019/7/17 05:00)

栄誉に輝く18製品

日刊工業新聞社は「第49回機械工業デザイン賞」の入賞18製品を決定した。最優秀賞(経済産業大臣賞)はアマダの高速パンチ・ファイバーレーザ複合マシン「EML―AJシリーズ」と、オークマの次世代ロボットシステム「ARMROID(アームロイド)」の2点を選定した。日本力(にっぽんぶらんど)賞はクボタの乗用形田植機「ナビウェルNW8S」とTMT神津(兵庫県三田市)の合繊用リワインダー「WINDING―MASTER」の2点を選定した。

同賞は機械分野の製品の中で、優れた機能美と性能を併せ持つものを外部の有識者による審査委員会が選定して表彰する。贈賞式は24日11時から東京・飯田橋のホテルグランドパレスで行う。

《最優秀賞(経済産業大臣賞)》

【アマダ/高速パンチ・ファイバーレーザ複合マシン EML―AJシリーズ】

金属板をパンチ金型とレーザーで切断したり、穴を開けたりする機械。レーザーを高生産性のファイバー型とし、二酸化炭素(CO2)型に比べ、最大4倍の高速切断と消費電力の大幅低減を実現した。軟鋼3・2ミリメートル厚の窒素切断は切断面の面粗度が約30%向上。パンチ加工も高生産性で、小口径の加工時にヒットレートを従来機比25%高めた。220本の金型を搭載し、段取り時間を削減。安定した連続自動運転が可能になる。

【オークマ/次世代ロボットシステム ARMROID】

「ARMROID(アームロイド)」は工作機械の加工室内に搭載する次世代型ロボット。ロボット初心者もオークマ製のコンピューター数値制御(CNC)装置により工作機械と一緒に複雑なプログラミングやティーチングをせず、干渉なしで操作できる。システムインテグレーターの支援も不要。加工対象物(ワーク)の投入・取り出しに加え、切削液噴射、長尺ワーク支持の機能も持たせた。手作業でのワーク着脱時は加工領域外へ待避でき、柔軟な使い分けも可能。

《日本力(にっぽんぶらんど)賞》

【クボタ/乗用形田植機 ナビウェル NW8S】

全地球測位システム(GPS)機能を活用し、車輪のスリップを補正しながら植え付けなどができる新機構を搭載した。湿田など農地の影響を受けずに設定した株間、施肥量を計画通りに実施でき、苗や肥料は余分量準備の必要がない。クラウドを生かした営農支援システム(KSAS)とも連携し農家の収益向上に貢献する。

【TMT神津/合繊用リワインダー WINDING―MASTER】

独自機構で限りなく弱い力でかさ高く、ソフトに巻き取れるよう工夫し、染色の均質化に貢献する合繊用リワインダー(糸巻き返し機)。先行する欧州メーカーと同等以上の性能、品質に仕上げた。リワインダーは6台1セットなど、複数台一緒に導入するのが一般的だが、同製品は1台から導入可能。顧客は設備費を抑制できる。

《日本商工会議所会頭賞》

【パルステック工業/非接触硬さムラスキャナ muraR】

鋼材の研削や熱処理の際に生じる表面の硬さの違いを、X線照射により非接触・非破壊で検出しクラックの予防などにつなげる。60ミリメートル角の対象を2分程度でスキャン可能。デジタル変換ユニットなどを組み合わせればマッピング表示でムラの可視化もできる。小型軽量で、ロボットアーム先端に取り付ける無人検査なども提案する。

【和井田製作所/インテリジェント ジグ研削盤 UJG―35i】

金型や機械部品の穴・輪郭形状を、独自のU軸切込機構と対話式ソフトウエアで高精度かつ高能率に加工する。砥石(といし)径プラス20ミリメートルの異形穴を同じ砥石で自動で連続加工し、加工プログラムの自動生成や自動運転管理などが容易に行える。テーブルサイズや各軸の移動量はそのままに幅と高さを従来機比で各100ミリメートル小型化した。

《日本産業機械工業会賞》

【東芝機械/超精密マシニングセンタ UVM―700E(5AD)】

精度や性能が高く評価され、光学機器などの微細加工用途の精密加工機で最大手。ただ、デザイン性や作業性は置き去りだったとの反省から、これらを改善しつつ精度と性能を高めた。加工対象物(ワーク)の搬出入から段取りまでの作業動線を意識した外観デザインを採用。顧客からの要望が高くなると見込まれる自動扉を採用した。

《日本工作機械工業会賞》

【牧野フライス製作所/細穴加工用放電加工機BX3】

航空機エンジンのタービンブレードの冷却穴を高速、高効率で加工する。業界最長の電極長さで電極交換頻度を削減。交換時間も半減する。また、多様な形状に対応する柔軟性を持たせた。複数の世界的な航空機エンジン会社への納入実績がある。航空機の新規・保守需要は増加しており、一段の生産効率化が求められていることに対応した。

《日本電機工業会賞》

【島津製作所/回診用X線撮影装置 MobileDaRt Evolution MX8 Version】

X線撮影室まで行くことができない入院患者などの近くまで移動し、X線撮影できる装置の最新モデル。院内走行時の前方視野を広げる設計・デザインで安全性を高め、装置幅のコンパクト化で狭い病室での取り回しにも配慮した。大型モニターによる撮影画像の視認性向上と、タッチパネルの操作性向上で回診業務を効率化する。

《日本ロボット工業会賞》

【不二越/スリムアーム協働ロボット「CZ10」】

国際安全規格「ISO10218―1」の第三者認証を受けた安全設計、高い操作性に加え、高精度な位置制御機能を搭載した。作業者が安全に作業できる、作業者に威圧感を与えないことをコンセプトに、滑らかな曲線を描くデザインを採用。ロボット特有の硬質感を低減させるため、表面にサテンつや消し塗装も取り入れた。

《日本デザイン振興会賞》

【コニカミノルタ/超音波診断装置 SONIMAGE MX1/SNiBLE yb】

高画質を追求した小型の超音波画像診断装置。広帯域高周波プローブと新画像エンジンで音響ノイズを抑制、浅部から深部まで広く画質を向上した。従来困難だった広帯域かつ高感度の検査が可能。針先を強調して表示し患部へ的確に薬液を注入できる。従来機から約57%軽量・小型化し患者の近くで医療行為を行うニーズに応える。

《日本デザイン学会賞》

【グローリーAZシステム/システムキーボックス KBS―1000シリーズ】

鍵の使用履歴を厳正に管理できる。鍵ホルダー認証部に無線識別(RFID)を採用した。このため物理的な形状の違いで認証する従来タイプに比べ、各鍵ホルダー部を共通の形状にでき、ユーザーの求める仕様で最小の製品サイズを実現。製品の軽量化にもつなげた。また全ての鍵を返却しなくても鍵交換作業ができるようにした。

《審査委員会特別賞》

【キヤノン/大口径超望遠レンズ EF400mm F2.8L IS III USM/EF600mm F4L IS III USM】

報道などプロ向けの大口径超望遠レンズ。従来製品から光学系やメカ構造を大幅に刷新。高画質を保ちながらも質量2840グラム(EF400mm)、3050グラム(同600mm)と大幅に軽量化した。操作に便利な新機構で機動性を高めた。独自のコーティング技術や新たな遮熱塗料を採用し、炎天下や野外の過酷な環境でも高精度な撮影を実現した。

【キヤノン電子/ドキュメントスキャナー imageFORMULA DR―G2140】

従来機に比べて読み取り速度を上げ、A4サイズで300dpi時、1分当たり140枚という高速スキャンを実現した。また新たに搭載したコンタクトイメージセンサーで画像処理性能を向上。文字の薄い原稿や、しわや汚れの生じた原稿を高速かつ高品質に補正する。大量の書類を管理する金融機関や自治体などの電子化業務を効率化できる。

【新日本工機/高速形状加工機 DC―5SL】

重量30トン規模の大型金型の加工向けに、移動距離が長くなるX軸(テーブル前後送り)を強化した。高推力のリニアモーターを採用し、切削送り速度や加速度などを高め、同社従来機比で最大21%の生産性向上を達成した。またカメラ式工具計測機能を搭載することで、刃先の画像認識による高精度計測を実現している。

【高松機械工業/Σiローダ 高速タイプ】

「速さ」と「省スペース」を両立した加工対象物(ワーク)搬送装置。ワークの供給などにかかるローディングタイムを短縮するため、ローダーの移動速度を速くするだけでなく、必要だったローディング動作を15から12へ省略した。可搬重量は従来機と同等で、ローディングタイム約66%減、サイクルタイム約42%減を実現した。

【ホーコス/ツインスピンドル ベッドレスマシニングセンタ NJ50 DUO】

主軸を2本備えたベッドレスマシニングセンター(MC)。従来のベッドレスMCに比べ設置面積を35%削減でき、単位面積当たりの生産性が向上する。リニアエンコーダー、冷却装置を標準装備し高精度部品加工に対応する。保守に必要な空圧、油圧機器類を装置前後面に配置し、装置間の距離が最小となるレイアウトにできる。

【安川電機/シーリング向けロボット MOTOMAN―GP25SV】

自動車製造工程でロボットに求められるのは省スペース、高効率、フレキシビリティー。MOTOMAN―GP25SVは車体裏のボディー接合部をシーリングする際に、アームの伸びる方向を従来品と逆向きにすることで床下でも十分な作業を可能にした。またケーブルを中空アーム内部に収容して、周囲との干渉も抑えた。

【審査概要/専門審査委員代表(千葉大学名誉教授) 青木弘行】

今回の応募は27社29件(内、中小企業は8社8件)と、昨年に比較して減少に転じた。その内容は「工作機械、環境整備機器、荷役・運搬機械、包装機械、電気機械、電子機械、金属加工・処理機械、繊維・縫製機械、ロボット関連製品、測定機器、医療・福祉機器、商業機械、自動化機械、農業機械」と多岐にわたっていた。

今回の応募製品を総括すると、新技術の開発やイノベーションを創出した事例は少なく、従来技術の高度化や熟成に代表されるハード開発の優位性を誇示する製品が大多数を占めた。一方では、ハードのコモディティー化打開策としてソフト開発に活路を求め、優れた操作性を誇示する製品が数多く存在し、中には「体験価値」をデザインする製品も散見された。デザインを狭義ではなく広義に解釈する本顕彰制度の趣旨からすると、これらソフト機能の充実策やハードとソフトの融合策は非常に好ましい状況にあり、過去の受賞製品群と比較してその完成度は格段に向上している。

最後に、所要時間約2時間に及ぶ現物審査においては、製品開発に取り組む並々ならぬ情熱を肌で感じ取ることができ、デザイン振興を目的とした本顕彰制度の社会的意義を再確認する格好の機会でもあった。最新の成果が誕生した背景やその内容を詳細にうかがう機会は、産業界の動向を広く横断的に理解すると同時に、デザイン開発の方向性を議論する貴重なステージであるともいえる。

(2019/7/17 05:00)

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