(2019/11/13 05:00)
森林環境保全のための新しい税制がスタートした。自治体は森林整備にとどまらず、国産材の利用拡大や木質バイオマス発電の事業促進など、地域産業の活性化につなげる呼び水にしてもらいたい。
政府は今年度から地方自治体に森林環境譲与税の配分を始めた。財源は2023年度まで特別会計からの借り入れで賄う。24年度に温室効果ガスの排出削減や水害防止を目的とした森林環境税を創設し、先行配分した分の赤字を補う仕組みだ。実績づくりを急ぐことで納税者の理解を得やすくする狙いがある。
森林環境税は個人住民税に年1000円を上乗せして徴収する。税収は約620億円を見込み、私有林人工林面積5割、林業就業者数2割、人口3割の基準で按分(あんぶん)する。最終的には国の特別会計を通じて9割を市町村、1割を都道府県に配分する。
国からの配分は毎年9月と3月で、自治体はインターネットで使途を公表しなければならない。市町村での使途は法律に「森林の整備を担うべき人材の育成及び確保(中略)、木材の利用の促進その他の森林の整備の促進に関する施策」とある。
課題は制度の趣旨にどこまで適合するか使途の範囲がはっきりしない点にある。林業従事者の人件費に充当することも可能だが、政府は「それでは納税者の理解を得るのは難しい」としている。
新たな制度に慣れない自治体の中には、使途を決めかね、ひとまず基金にプールしておくことにしたケースも少なくない。総務省は林野庁と連携し、手引きとなる使途の事例集を公表する予定という。
ただ製材・木工業者にとっては配分額が大きい政令指定都市向けなどに地場産木材を使った製品を売り込む好機だろう。自治体が出資や助成などで関わる木質バイオマス発電では間伐材の搬送路の整備などに生かす方法も考えられる。
目的が明確でないまま自治体に配分するのでは、バラマキとの批判を免れない。納税者の理解を得つつ、地域の活性化に役立ててもらいたい。
(2019/11/13 05:00)
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