(2020/1/21 05:00)
「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい」。物理学者の寺田寅彦は浅間山の噴火を実見し、人々が自然の危機を正確に把握する難しさを随筆につづっている。
中国湖北省武漢市で集団発生している新型コロナウイルスが原因とみられる肺炎患者は200人(20日現在)に達し、死者も増えている。厚生労働省は武漢に渡航歴のある中国人男性の感染を確認。国内感染者が出た初のケースになった。
新型コロナウイルスで思い出すのは2002年から中国を起源に広まった重症急性呼吸器症候群(SARS)だ。カナダや米国などで8000人以上が感染し、約800人が死亡。世界を震撼(しんかん)させた。
今週は中国の旧正月にあたる春節を迎え、月70万人を超す中国人観光客の訪日が見込まれる。感染拡大が心配されるが、厚労省は「ヒトからヒトへの持続的な感染は確証がなく流行は考えにくい」とみる。
予防法は手洗いやうがいの励行にマスク着用。中国渡航時は感染源の疑いがある野生動物には近寄らない。過度に恐れず適切に備える。寺田が生きた時代と異なり、アンテナを高くしておけば「正当にこわがる」のは難しくないはずだ。
(2020/1/21 05:00)