(2020/4/10 05:00)
放射性物質を含むバーク(樹皮)や栽培作物の処理と活用を両立させる成果を期待したい。
国立環境研究所(茨城県つくば市)が、放射性物質で汚染されたバークを、木質バイオマス発電に利用する研究に取り組んでいる。
バークはボイラなどの燃料に使われるが、東日本大震災後は「木質バイオマス発電に使えないか」との声が福島県内で高まり、研究に着手した。課題は燃えガラと煤塵(ばいじん)に、どの程度の濃度の放射性物質が含まれるか十分な科学的知見が存在しないことだ。
これまでの検証で、燃焼方式などが異なると燃えガラと煤塵に含まれる放射性物質の比率が変化するのはわかってきた。さらにラボでの実験で知見を積み上げ、2021年度までにデータ蓄積を終える方針。安全性評価を経て、24年頃にはメーカーと実用化に着手する見込み。
担当者は再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)終了後も持続可能な事業にするため「残渣(さ)の有効利用など、コスト削減を重視して研究を進める」という。
除染特別地域の耕作放棄地で試験栽培したイネ科の飼料作物ソルガムなどを使い、バイオマスによるメタン発酵の研究も進んでいる。放射性物質は発酵過程で出る水から吸着剤により除去する。当面はエネルギー利用が主体で、発生したメタンガスは植物工場などで燃料として使用する。
ソルガムの伐採後に根や茎をすき込むことで、はぎ取り除染で養分が足らなくなった農地の地力回復もできるため、復興の初動として興味を持つ自治体もあるという。農地の再生が進み、放射性物質の濃度が低くなった段階では、牛の粗飼料への利用も想定している。
こうした技術の社会実装を進めるには、国や自治体が住民や国民に分かりやすくデータを示して理解を得るとともに、風評被害を防ぐ丁寧な説明が欠かせない。産業再興にめどをつけ、除染地域へ住民の帰還や転入が進む日が来るよう、研究者らの努力と英知に期待したい。
(2020/4/10 05:00)
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