(2020/4/20 05:00)
高度成長期、郊外に閑静な住宅街を生み出し、その後も環境維持に大きな役割を果たしてきた地域建築協定が岐路にある。
国は中心市街地から離れた住宅街でも高齢者が生活し易くするため、土地利用の規制を緩める。開会中の国会で都市再生特別措置法を改正し、最も規制が厳しい第一種低層住居専用地域にミニスーパーや病院などの生活利便施設の建設を可能にする。しかし、建築協定がある地域ではおもわぬ足かせとなり、こうした施設がつくれない恐れがある。認可者である特定行政庁(建築主事のいる自治体)は、実態を見る必要があろう。
建築協定は国の土地利用や民法よりも厳しい“私法”だ。一定規模以下の土地分割を禁じたり、建物の形状や色彩などを制限、また賃貸住宅や店舗併用住宅の禁止など用途も制限できる。区域内の土地所有者の全員が合意し、自治体の認可を受けて効力を発する。
実際には住宅街を開発したデベロッパーが、高級感や統一イメージを出して販売し易くするために、分譲前に行政と「一人協定」を結び、購入者が自動的に協定を引き継ぐケースが多い。協定内の土地を取得した第三者も拘束する強い効力をもち、10年単位で更新するなど長期にわたるため、良くも悪くも街の個性を作り上げている。
一方で、協定で土地が分割できないため相続税が払えず手放したり、広すぎる土地を持て余し都心に移り住む子世帯も目立つ。反対に、若い世代がその街を気に入っても、土地が広すぎて購入できないこともある。開発当初から住む長老世代が環境変化を拒み、頑として協定を変えさせないと悩む街もある。
国土交通省の調べによると、有効な建築協定は2007年度末の2803件から17年度末には2399件に減少した。街に建築協定というバリアーを張り変化を拒んだ結果、空き家が増え、街と人が一緒に老いていくところも少なくない。小規模な区域の建築協定は目立たず、落とし穴のような住宅街もある。こうした街に柔軟性を持たせ、流動化を図ることが必要だ。
(2020/4/20 05:00)
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