(2020/4/22 05:00)
原油価格が急落した。このままでは、世界経済の先行きに大きな影を落としかねない。産出国、消費国が連携して、市場の安定に乗り出すべき時だ。
20日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場で、米国産標準油種(WTI)の先物相場が、一時マイナス40ドルに急落した。売り手が買い手にカネを支払うという例のない事態。マイナス相場も史上初めてのことだ。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行(パンデミック)で、世界経済が急激に停滞し、原油需要が大幅に低下した。さらに需要の下降時に行われるべき減産で、産油国の姿勢が一致せず、適切な減産行動が取れていないことが相場の下落に拍車をかけた。
中東産油国などによる石油輸出国機構(OPEC)と、ロシアなど非OPEC国は日量970万バレルの減産で合意したが、国際エネルギー機関(IEA)が公表した需要予測は、4月が前年同月比日量2900万バレルの減少、5月は同2600万バレル減少で、合意した減産幅をはるかに上回る深刻なものだった。
WTIがマイナス相場となったのは、米国の石油備蓄容量が不足しており、先物取引の投資家が、原油の引き取りを嫌気して投げ売りにでた結果だ。今や世界最大の産油国となった米国だが、需給調整機能が脆弱なリスクが顕在化したともいえる。
原油相場の急落は、長引けば金融市場を毀損し、世界経済全体にも多大な悪影響を及ぼす。事態の収拾には、産油国がさらに減産に踏み切ることが必要だ。消費国も安定へ協力する姿勢が欠かせない。
10日に開催したG20エネルギー相会合は、市場の安定へ「必要なあらゆる措置を講じる」ことで合意した。今こそ合意を実行に移すときだ。必要なら、産油国と消費国による緊急協議も開催するべきだろう。世界が連携して対応しなければならない事態だ。中でも米国が当事者として、解決策を提示する責任を負っている。主要な需要国である日本は、積極的に調整役を果たすべきだ。
(2020/4/22 05:00)
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