中小のコロナ対策製品・技術(上)

(2020/5/15 05:00)

新型コロナウイルスの感染拡大防止の切り札として、中小企業が独自に開発した製品・技術に熱視線が注がれている。独自の技術力を基に、感染予防に欠かせないマスクや消毒液、飛沫(ひまつ)拡散防止板などを開発。需要が急増していることから、各社は増産に乗り出す。(3回連載)

オーダーメードで工場直販

野火止製作所 透明アクリル樹脂製間仕切り

  • オーダーメードで切断し、さまざまなサイズ、形状に応じる

野火止製作所(埼玉県新座市、川上博史社長、048・481・2300)は、新型コロナウイルスの飛沫感染を抑えるための透明アクリル樹脂製の間仕切りを取り扱う。主力の板金加工で使うレーザー加工機により、アクリル樹脂板をオーダーメードで切断し、サイズや形状などさまざまなニーズに応じる。

工場直販とすることで価格を市販品の7割程度に抑制。例えば、高さ500ミリ×厚さ3ミリメートルで幅900ミリメートルのサイズなら1万1000円台(消費税抜き)、幅600ミリメートルなら9000円台(同)で提供する。オフィスや会議室、社員食堂や対面で応対する役所、店舗など法人向けに最低20セットから注文を受けている。

光触媒塗料で抗菌力アップ

ワエストロ ウレタン畳・マット

  • ウレタン畳・マットにウイルス対策用を追加

ワエストロ(埼玉県熊谷市、古屋瑞起社長、048・527・1181)は、ウレタン畳・マット「くつろぎシリーズ」にウイルス対策用を追加し、受注を始めた。

従来製品の表面にササミック(大阪市住吉区)製の光触媒塗料「ルミチタンNAG」を塗布して製品化。光量の少ない屋内でも塗布した酸化チタン光触媒を活性化し、雑菌やウイルスの駆除、消臭効果を持続する。

同シリーズはこれまでも抗菌剤が標準加工されていたが、新型コロナウイルス対策の要望が多かったため、より抗菌力を高めた。

サイズは縦815ミリ×横815ミリ×厚さ6ミリメートル、縦1メートル×横1メートル×厚さ6ミリメートルの2種類を用意し、介護施設や保育園、医療機関など幅広い用途を想定する。

軽量でソフトなフィット感

信菱電機 透明フェースシールド

  • 信菱電機が商品化したフェースシールド「顔面シールドSE」

信菱電機(長野県飯田市、川手清彦社長、0265・25・7772)は、顔への飛沫を防ぐ「顔面シールドSE」を商品化した。

強みは軽量でソフトなフィット感。顔面を覆う部分には高透明PETシートを、額が当たる部位にはウレタンをそれぞれ採用した。約23グラムと軽量で、長時間装着していても締め付け感がないという。

送風機や家電製品の設計から加工、組み立てまでを一手に担う同社。培ってきた総合力を活かし、“畑違い”の製品ながら図面から起こして必要部材は既存ルートで調達した。

サンプルを飯田保健所で評価済み。5枚一組で価格は消費税込み・送料別1980円。部材が安定調達できれば、1日1000枚の生産能力で供給する。

非接触センサーを応用

SSC 据え置き型放射温度計

  • 据え置き型放射温度計「測太郎」

SSC(三重県桑名市、服部一彌社長、0594・33・3080)は、顔やモノなどの表面温度を非接触で測定できる据え置き型放射温度計「測太郎(そくたろう)」を発売した。主力製品の非接触型温度センサーを応用し、人の体表面温度などの測定ニーズの高まりに対応する。

事務所の机や受け付けカウンターに置けるスタンド式。物体から放射される赤外線の検知機能により、人が額をセンサー部に近づけると体表面温度を測定し表示する。測定範囲は15―65度Cまで。

各種製造ラインなどに用いられている同センサーは応答速度が速い。薬機法で定める「体温計」ではないが、従業員らの体調チェックなどの用途を想定している。

手指消毒用 神戸市に納入

白鶴酒造 高濃度アルコール

  • 白鶴酒造が神戸市に提供する、高濃度アルコール5リットルボトル

白鶴酒造(神戸市東灘区、嘉納健二社長、078・822・8901)は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、手や指の消毒用に使うことが可能な高濃度アルコールの生産を開始した。神戸市に5リットル容器入り1000本の高濃度アルコール、計5000リットルを供給する。

商品名は「アルコール77」。清酒づくりに欠かせない原料として、同社が仕入れている醸造アルコールを消毒に適したアルコール濃度77%に加工。消防法の規定による許可を受け、1日当たり400リットル未満の生産が可能という。神戸市への納入価格は未定。同社は「神戸市への供給が最優先」とした上で「引き合いがあれば、消費者や民間病院向けへの販売を検討する」としている。

コロナで前年比8倍増産

フジコー 空気消臭除菌装置

  • 光触媒技術で除菌するブルーデオは受注が急増している

フジコー(北九州市戸畑区、萩尾寿昭社長、093・871・3724)は、光触媒技術でインフルエンザウイルスや黄色ブドウ球菌などを除去する空気消臭除菌装置を増産する。新型コロナウイルス感染拡大で受注が急増しており、2020年度は前年度比約8倍の6万台生産する。

「富士の美風 ブルーデオ」は、酸化チタンと抗菌金属を混合した素材を800度C以下で低温溶射し、基材に高密度に密着する被膜形成技術で光触媒の効果を高めた。消費税抜きの価格は2万6800円。北里環境科学センター(相模原市南区)に依頼したネココロナウイルス除去効果試験では、フィルターに付着した2600万個のウイルスが、光照射後4時間で50個未満に減衰した。

スポーツウエア素材で吸湿速乾

ハマノクリエーション デザインマスク

  • 吸湿速乾性素材のマスク「3D Washable Mask」

ハマノクリエーション(東京都墨田区、浜野弘明社長、03・6658・8901)は、吸湿速乾性の高い機能性素材のマスク「3DWashable Mask(ウォッシャブルマスク)」を発売した。スポーツウエア素材を活用し装着感の高い形状に設計。二重構造の間に3層の不織布シートを入れて使用する。消費税抜きの価格はマスクケース付で1500円を予定。

同社はゴルフウエアの受託製造を中心に手がける。吸湿速乾性が高く肌触りの良い段ボールニット素材を採用し、ファッション性に配慮したデザインマスクに仕上げた。白、黒、ネイビー、グレーの4色。手洗いで繰り返し使用できる。シートは別売りで、40枚入りで1500円。

染色・縫製、県内企業で完結

北市漆器店 手染め加賀友禅マスク

  • 手染め加賀友禅マスクの立体型

北市漆器店(石川県加賀市、北市博之社長、0761・77・0123)は、石川県の伝統工芸品である加賀友禅の生地を用いた「手染め加賀友禅マスク」を発売した。価格はプリーツ型が1500円(消費税抜き)、立体型が1800円(同)。それぞれ赤と青の2色を用意。同社オンラインショップから送料300円で販売。伝統工芸の力でマスク不足解消に貢献する。

生地の染色や縫製、耳にかけるひもまでを全て石川県内の企業で完結した。家庭用品やインテリアの商品開発、工芸品のセレクトショップの運営を手がける同社は新型コロナウイルス感染拡大が深刻化する中で「華やかなマスクで使用者の気持ちを明るくしたい」としている。

中間に不織布入れた5層構造

小杉織物 絹糸織り布マスク

  • 絹糸織りに続き商品開発した抗菌性の銀イオン蒸着糸を使ったマスク

小杉織物(福井県坂井市、小杉秀則社長、0776・66・0255)は、絹糸で織った布マスクを発売した。価格は消費税抜きで1枚1500円。自社のウェブサイト、卸販売で展開して、1カ月で約8万枚を出荷した。

同社は浴衣帯のメーカーで、国内シェアが9割。その自慢の高速織機で袋状の生地を作り、中間に不織布を入れた5層構造にした。絹は肌に優しく抗菌性があり、帯メーカーらしい意匠性も特徴だ。

続いて抗菌性の実証データ付の銀イオン蒸着糸を使ったマスクも製品化。価格は同2000円前後を予定し、近く受注を始める。浴衣帯の商談が相次ぎ不調となる苦境でマスク作りに挑戦し、全社員で奮闘している。

高い抗菌性 月産5万枚計画

LAPO・高木織物 デニム生地の抗菌・消臭マスク

  • 素材は薄手の白色デニム生地

LAPO(岡山県玉野市、浅野幸子社長、0863・33・3707)とデニム生地メーカーの高木織物(同井原市)は共同で抗菌と消臭の機能を持つマスクを製品化した。試験機関に抗菌性試験を依頼し、黄色ブドウ球菌と大腸菌が8時間後に99%殺菌したのを確認したという。消費税込みの価格は1枚1500円。

岡山県は国産デニム発祥の地で、高木織物は多様なデニム生地を生産し、国内外に顧客を持つ。LAPOは触媒や光触媒などを販売しており、3年前から高木織物と新たなデニム生地の開発を進めてきた。今回はタングステン酸アンモニウム化合物をデニム生地に浸し、抗菌などの機能を付加した。月に5万枚の生産を計画する。

(2020/5/15 05:00)

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