(2020/8/4 05:00)
7月23日は「海の日」だ。明治天皇が東北地方の視察から横浜港に帰港した1876年7月20日に由来し、海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う日と定められている。日本の貿易における海上貨物の割合は重量ベースで99・6%を占める。造船業では国際競争力の向上を目標に、企業間の連携や技術力の強化に重きを置く。産業や生活を支える海に目を向け、造船業の動向をまとめる。
新型コロナの影響懸念 代替建造需要に期待
2019年の世界の新造船受注量は約4149万総トンで、18年の5040万総トンから大幅に減少している。海上荷動き量と船腹量のバランスが崩れる「船余り」の状況が長引いていることが主な原因だ。20年は新型コロナウイルス感染症の影響で新造船の商談数が減少しておりさらに厳しい状況が見込まれる。
日本造船工業会の斎藤保会長は6月17日の定例会見で「新型コロナによる海上荷動き量への影響は一時的なものと見ている。造船業は世界経済の拡大に伴い、中長期的に成長していく産業である」と強調した。実際にリーマン・ショック後の09年に低下した海上荷動き量は10年には08年以上の水準となっており、右肩上がりの増加を続けている。併せて「20年後半には10年前後に大量建造された船の代替建造需要が出てくるだろう」(同)と今後の見通しを話した。
日本の造船業では19年の受注量が約671万総トンと、18年の約1031万総トンから約34%減少している。国別受注シェアでは13~15年の24%から14%に低下した。韓国などで自国の造船業への多大な公的支援が行われており、船価競争で不利な状況にあることが背景だ。
このような支援は世界貿易機関(WTO)の補助金協定に違反しているおそれがあり、日本と韓国で二国間協議が進められている。協定違反が認められれば支援措置の廃止勧告が出されるほか、類似施策への抑止効果が期待される。
GHG排出ゼロ目指す
公正な競争条件の確立と同時に、日本の国際競争力の向上は大きな課題としてのしかかっている。今後は温室効果ガス(GHG)大幅削減船、自動運航船など海運ニーズの先取りが重要課題だ。技術開発の促進に向け、日本造船工業会は企業間の連携や協業が必要であるとの認識を示す。現在、建造量が国内で1―2位の今治造船とジャパンマリンユナイテッド(JMU)が、共同会社の設立を進めている。
船舶はトラックや飛行機などと比較して輸送量当たりの二酸化炭素(CO2)や大気汚染物質の排出量が少ない輸送手段だ。しかし海上荷動きの増加が続く中、より一層の環境配慮が必要不可欠である。
20年1月1日から強化された硫黄酸化物(SOX)の排出規制をはじめ、国際海事機関(IMO)による環境規制の強化が進んでいる。IMOは18年4月に「国際海運からのGHG削減戦略」を採択した。そこでは08年を基準年として、50年までに国際海運におけるGHG排出量を半減させ、今世紀中のなるべく早期にGHG排出ゼロを目指す方針だ。
国土交通省は「国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップ」を20年3月に策定した。28年までにGHGを排出しない「ゼロエミッション船」の商業運航することが目標の一つ。水素やアンモニアなどCO2を発生させない燃料の利用や、排気からCO2を回収する装置の搭載により、ゼロエミッションを実現するコンセプトイメージが作成されている。
ゼロエミッション船商業運航開始後の普及拡大に向け、IMOには新規の国際枠組み案を19年5月に提案している。既存船舶に対して燃費改善や高性能な船舶への代替を促進する内容となっており、25年頃までの実現を目指している。
日本の造船業はこれまでも省エネ・環境技術を駆使した「エコシップ」を強みに発展を目指してきた。環境汚染対策への機運の高まりが追い風になると期待される。
(2020/8/4 05:00)