(2020/8/11 05:00)
研究開発費 中長期的な戦略で投資継続
2020年度に計画する研究開発費を問う設問には、238社のうち102社が回答し、その総額は19年度実績比1・9%増だった。全18業種中12業種が、19年度よりも増額すると見ている。20年度の研究開発費の増減は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が大きい。医薬関連では新薬開発への投資が全般的に活発だ。一方で市場環境が厳しい中でも、中長期的な戦略として研究開発投資を継続していこうという姿勢も見られる。
業種別にみると、20年度は「医薬・トリレタリー」の分類では17社中15社が増額と回答。増加の理由は「持続的成長のため研究開発費増加」(大塚HD)、「重点領域である認知症や、がん領域での開発に積極的な資源投入」(エーザイ)、「新型コロナウイルスに対する治療薬・ワクチンの研究開発費を増やす」(塩野義製薬)、「主にグローバル開発品の臨床試験費用の増加」(田辺三菱製薬)など、製薬企業を中心に積極的な投資が目立っている。
「化学」の分類は14社中10社が増額した。「新規事業に注力するため」(トクヤマ)、「中長期的な経営を踏まえた先行投資」(デンカ)、「研究部署を新設したため」(大陽日酸)、「国内研究拠点、および海外拠点の設備投資、人員配置を積極的に進めているため」(東京応化工業)など新たな取り組みや体制のための投資が増えた。
「産業機械・造船・車両」の分類では、12社中8社が増額したと回答。「中期経営戦略や長期ビジョンに基づく経営・事業インフラの高度化における経営リソース強化のため」(荏原)、「アウトソーシング積極活用により建機メーカーとしての先端技術開発、新事業開発を加速させるため」(コベルコ建機)、「事業環境の先行きが従来になく不透明な中でも、将来の成長に向け必要な投資は優先順位を付けて実行してく」(ダイキン工業)などが増加の理由に挙げられた。
「建設・住宅・不動産」の分類は、7社中6社が増額。「技術センター施設拡充及び技術系計算サーバーの増強などに伴う増加」(大成建設)、「減価償却費等の固定費増加に加え、技術開発プロジェクトやチーム研究等が増加するため」(戸田建設)、「住宅商品の新規開発、施工技術や生産技術開発のため」(大和ハウス工業)など積極的な姿勢が目立った。
研究開発テーマ 「環境・エネ」取り組み必須
研究開発で力を入れている分野(複数回答)には223社が回答した。最多は「環境・エネルギー」で68・6%。2位との差は14・3ポイントで、すでに研究開発において環境・エネルギーへの取り組みは必須となりつつある。2位は「大量データ(ビッグデータ)・モノのインターネット(IoT)」で54・3%。前年度比0・9ポイント増と微増だった。
続いて大きく順位を上げたのは3位の「情報通信技術(ICT)・エレクトロニクス」の53・4%で前年度比5・9ポイント増。前年度の5位から順位を二つ上げた。新型コロナウイルス感染症の影響でテレワーク(在宅勤務)やオンライン授業の導入などの通信環境の整備の支援を手がける動きが見えてくる。
4位は「ロボット・人工知能(AI)」(49・3%)、5位が「医療・ライフサイエンス」(45・3%)、6位が「ナノテク・材料・新素材」(44・8%)となった。
各企業の具体的な記述からテーマの流行を分析した。個別のテーマの中にはAIを組み合わせた研究開発が多くみられた。「AIの医療分野への展開」(キヤノン)、「AI文書比較技術の研究開発」(リコー)、「AIやIoT技術を利用した製造技術」(スズキ)、「AIなどの活用による設計支援技術開発」(トーヨータイヤ)、「トンネル用シールドマシンのAIによる自動運転技術の開発」(清水建設)、「AI技術を活用したプラント自動運転や素材探索」(ENEOS)など幅広い分野でAIを利用した研究開発が進む。
「自動運転に関わる技術」(日産自動車)、「電動ブレーキをはじめとした自動運転対応技術の開発」(曙ブレーキ工業)、「バスの自動運転化に向けた高精度に車両を停止できる技術」(ジェイテクト)など自動車業界で自動運転が大きなトピックスになっている。
さらに「農業機械の自動運転技術」(クボタ)、「建設機械の自動化・遠隔操作化」(コマツ)、「フォークリフトの自動運転や安全運転支援」(豊田自動織機)、「重機の自律運転」(大林組)など農業や建設業などにも自動運転の研究開発の動きが広がっている。
一方、環境・エネルギー関連の取り組みとして、「再生可能エネルギー(水素・アンモニア利活用)、航空機電動化」(IHI)、「ゴミ焼却発電」(日立造船)などが挙がった。また「国際宇宙探査機用タイヤ」(ブリヂストン)、「宇宙空間における農場システムの開発」(竹中工務店)など将来を見据え宇宙を舞台にした研究開発への取り組みも始まっている。
R&Dアンケート設問
【問1】研究開発費(連結ベース)についてうかがいます
1‐1.2019年度実績と2020年度計画の金額と売上高に占める比率を記入してください
◆2019年度( 億円)(売上高の %)
◆2020年度( 億円)(売上高の %)
1‐2.決算期変更がある場合 (a)あり 変更内容( )
1‐3.今期(2020年度)計画(金額ベース)が増減する理由を記入して下さい( )
【問2】研究開発のテーマや手法についてお尋ねします
2‐1.力を入れている研究開発分野を下記から選んで下さい
【複数回答可】
(a)ICT・エレクトロニクス(b)医療・ライフサイエンス(c)ナノテク・材料・新素材(d)先端機械加工・自動化システム(e)ロボット・AI(f)環境・エネルギー(g)安全・防災(h)ビッグデータ・IoT(i)宇宙(j)その他( )
2‐2.具体的な研究案件を挙げて下さい( )
【問3】研究開発者についてお答え下さい
3‐1.研究開発人員の採用について
(a)採用が難しくなっている(b)採用しやすくなっている(c)変わらない
3‐2.理由( )
3‐3.向こう数年を見通した研究開発人員数について
(a)増やす(b)減らす(c)横ばい(d)未定
3‐4.研究開発人員の確保について
【複数回答可】
(a)新規採用の拡大(b)中途採用の拡大(c)社内の配置転換(d)研究部門間での配置転換(e)働きやすさの向上(f)外国人人材の活用(g)その他
【問4】新型コロナウイルス感染症の関連でお聞きします
4‐1.研究開発部門の在宅勤務(テレワーク)の導入について
(a)今回から導入した(b)以前から導入している(c)導入を検討・計画している(d)現在は検討・計画はない
4‐2.研究開発部門の在宅勤務の割合は最大何%でしたか(最大 %)
4‐3.新型コロナウイルス感染症の治療や対策に関連する研究開発について
(a)今回から開始した(b)以前から開始している(c)開始を検討・計画している(d)現在は検討・計画はない
4‐4.具体的な研究開発案件を挙げて下さい( )
【問5】研究職における女性の活躍推進についてうかがいます
5‐1.研究職の女性比率は、およそどの程度ですか
(a)6割以上(b)約5割(c)約3割(d)1割以下
5‐2.研究職の女性採用増を意識していますか
(a)している(b)していない(c)その他
5‐3.研究職または技術職から実現した最も高い女性の上級職のクラスは何ですか
(a)役員クラス(b)部長級(c)課長級(d)主任級(e)上級職はいない
5‐4.活躍推進の工夫があれば挙げて下さい( )
5‐5.ご意見を自由筆記でお願いします( )
18日から「科学技術・大学」面で「研究開発トップに聞く」を連載します
(2020/8/11 05:00)