第50回機械工業デザイン賞IDEA、入賞21製品

(2020/11/26 05:00)

審査概要/専門審査委員代表(千葉大学名誉教授) 青木弘行

高度経済成長期の1970年(昭45)、日刊工業新聞創刊55周年記念事業として発足した「機械工業デザイン賞」は、経済産業省・文部科学省・特許庁・日本商工会議所・産学6団体の支援を受け、今年で第50回を迎えることができた。

設立当初、工業技術・生産技術のデザイン賞として関連業界から大きな注目を集めた本賞は、それぞれの時代を象徴するエポックメーキングな製品や独創的な製品を数多く顕彰し続け今日に至っている。換言すれば、「新たな社会的価値を創出する行為」がデザインであるとの認識下、絶妙なブレークスルーで顕在ニーズに応えた問題解決型の製品や、潜在ニーズから仮説を構築し革新的思考で将来の方向性を提示した創造提案型の製品を顕彰してきている。

そこで今回、半世紀という節目を期に顕彰内容の実態をアクロニムとしてシンボル化、名称を「機械工業デザイン賞IDEA」と改称してロゴマークを一新した(デザイン:専門審査委員・尾登誠一東京芸術大学名誉教授)。

今回の応募は32社34件(内、中小企業8社8件)と、昨年に比較して増加に転じた。審査は、3月12日に開催された「第1次審査委員会(書類審査)」において本賞の審査基準:(1)企画力・社会性「企画内容・コンセプトの有効性や社会的貢献度」(2)機能・性能・品質「要素技術・システムにおける発展的思考や独創性」(3)操作性・安全性・保守性・経済性「技術内容を踏まえた人間要因や保守・点検に対する配慮」(4)造形・造系処理「モノ・コトと上記3要件との有機的関連性」に従って、第2次現物審査対象製品21件(内、中小企業3件)を選定した。

その後、4月7日−5月20日の予定で専門審査委員が応募企業や納入先を訪れ、開発の背景や企画意図、技術のありようや造形・造系処理との関わりに関するプレゼンテーションを受け、稼働・実演を踏まえた「第2次現物審査(出張審査)」を行う手はずを整えていた。

しかしながら、新型コロナ感染拡大の影響を受け、本賞最大の特長である現物審査に匹敵する方法を見いだすことができず、出張審査断念という苦渋の決断を行った。したがって、今回は贈賞区分である「最優秀賞(経済産業大臣賞)・日本力賞・日本商工会議所会頭賞・団体賞・特別賞」の選定は行わず、書類審査通過21製品を「入賞」として顕彰することとした。

デザイン開発のありようやイノベーションの方向性を議論する貴重なステージは実現できなかったが、これらの製品には節目の年を飾るにふさわしい内容を見て取ることができる。

【アネスト岩田/スプレーガン WIDER1】

日本人やアジア人の手に最もなじむエルゴノミクスデザインを追求しつつ、部品レベルから設計を全面的に見直して品質と安定性を向上した。重心バランスの良さと、従来機種に比べ5グラムの軽量化を両立。各種調整つまみを握りやすい形状に改良し、少量塗布時の操作性も高めた。同社製品だと一目で分かる意匠にもこだわった。

【アマダ/LBCテクノロジー搭載ファイバーレーザマシン「VENTIS―3015AJ」】

レーザー光の軌跡を自動操作する「LBCテクノロジー」を世界で初めて搭載し、ファイバーレーザー加工の一層の高速切断と低ランニングコスト加工を両立した。材料下面までの最適な入熱により、ステンレスの窒素切断において、切断速度が従来比最大約3倍に向上。1メートル当たりの加工コストも同最大76%低減できた。

【ウエノテックス/AI搭載自動選別機 URANOS】

人工知能(AI)を搭載した廃棄物自動選別ロボット。中核部分のAIも自社開発することで、他社製品より高い選別精度や迅速で手厚いメンテナンスを可能にした。外側のカバーは曲線を多用した印象的なデザインを採用。同社としては初の試みだ。スリムに見せつつ、作業者がぶつかってもけがをしにくいように安全性にも配慮した。

【オークマ/大物部品・金型向け長時間無人運転対応立形マシニングセンタ MB―80V】

4500ミリ×2970ミリメートルと省スペースで加工範囲が幅1600ミリ×奥行き1050ミリ×高さ600ミリメートルと同社で最大級の立型マシニングセンター(MC)。投資額を抑えて小型門型MCのように大型部品の粗加工から仕上げまでを1台でできる。長時間無人運転のため予知保全や熱補正、切り粉自動処理などの性能も高めた。

【オークマ/プレス金型向け超高精度・工程集約対応門形マシニングセンタ MCR―S】

大型プレス金型などの加工用。往復段差0・5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)と高品位で、平均連続切削送り速度がX・Y軸で毎分20メートル、Z軸で同10メートルと高速。3次元測定器の約5倍の精度で機上測定ができる「3Dキャリブレーション」、年間の床面水平度の変化などによる加工空間のずれを診断する「精度安定診断機能」を搭載。

【キャニコム/多目的造林機械 山もっとジョージ】

伐根粉砕から作業道整備まで1台で多目的に行う造林機械。伐根用の刃は形状と並びを工夫する事でスムーズかつ効率的な作業を実現した。山中の急傾斜・凹凸でも安心、安定走行ができるように足回りや操作性を追求した。ボンネット部は先端を下げて視認性を向上。車体カバーは木や枝に引っかかりにくい球面形状でまとめた。

【キヤノン/光干渉断層計 OCT―S1】

光の干渉を利用して眼球の網膜や血管などの構造を断層画像として撮影する眼科機器。人工知能(AI)を用いた画像ノイズ低減技術や、同じ撮影位置で複数回撮影した画像を高精度に重ね合わせる技術を搭載し、高精細な画像を作成する。眼底の3次元(3D)画像を広範囲かつ深部までを撮影可能で、効率的に精密検査ができる。

【クボタ/アグリロボコンバイン DR6130A】

位置偏差制御、方位偏差制御の2種類の制御バランスを条件によって変化させ、コンバインの目標ライン通りの走行を達成した。空走距離が少なくなる走行ラインを自動判断するアルゴリスムを開発し、効率的な作業ルートを実現。もみ重量を測定する収量センサーを用いて、タンク満量となる刈り取り可能距離も予測する。

【コベルコ建機/7トン級油圧ショベル SK75SR―7】

生産性と機能性に加え、オペレーターの快適性を向上させた後方超小旋回ショベル。エンジン出力を上げて登坂走行速度を27%、アーム掘削速度を15%それぞれアップした。独自技術のエンジン冷却システムで防じん、低騒音を実現する一方、先進的な外観デザインと上質感漂うインテリアを兼ね備えることによって独創性を打ち出した。

【コマツ/モーターグレーダー GD405―7】

小規模な道路工事や住宅街の除雪作業など、さまざまな現場で使われる3・1メートルブレードサイズの整地用自走式産業車両(グレーダー)。従来機よりフロア高さを17センチメートル高くして、着座位置からでも立ち姿勢のように前方が見渡せるようにした。電気式作業レバーによって、腕の動きを最大92%低減。ひじを置いたまま操作ができる。

【シチズンマシナリー/くし刃ATC搭載 主軸台移動形CNC自動旋盤 Cincom L20 ATC】

ベストセラー機「Cincom(シンコム)L2012型」をベースに、くし刃型刃物台上に工具交換可能なツールスピンドルを搭載した。12本の工具を収納できる円盤型マガジンを採用し、自動工具交換装置(ATC)アームを介さずに工具を受け渡しする構造を採用。これにより、工具交換時間の短縮と、機械サイズの小型化を実現した。

【島津製作所/超高速液体クロマトグラフ「Nexeraシリーズ」】

液体試料を分析する計測機器。製薬や化学、食品、環境分野などで品質管理と、製造、研究の各部門で成分の分離や定性、定量に用いる。遠隔地から稼働状況を把握でき、稼働率の最大化と業務負担軽減を支援する。室温変動による気泡混入時は自動で排除、自己復帰する。分析データの品質維持と業務省力化をサポートする。

【東芝、東芝ライテック/カメラ付きLED照明 ViewLED[ビューレッド]】

天井などに設置する施設用ベースライトと映像録画カメラを組み合わせた業界初の製品。照明器具を設置するだけでカメラシステムを導入でき、録画機材の配置場所や配線を気にする必要がない。逆光で撮影が難しかった環境にも導入しやすい。録画映像はスマートフォンなどでも確認でき、監視や工程改善などに役立つ。

【FUJI/移乗サポートロボット Hug T1―02】

腰掛けた状態から立ち上がる、立ち上がった状態から腰掛ける、など要介護者のベッドから車いすなどへの移動を助ける移乗サポートロボット。人の動作を自然に再現し、要介護者の残った脚力を最大限に使える。重量35キログラム、価格98万円(消費税抜き)と前モデルよりそれぞれ半減し、介護施設や病院での導入や扱いを容易にした。

【古河ロックドリル/油圧クローラドリル HCR1800―EDII】

新開発した油圧ドリフターによって、油圧クローラドリル「HCRシリーズ」最大の穿孔(せんこう)径152ミリメートルを実現した。高い直進性と素早い穿孔を可能にするとともに、本体のダウンサイジングも実現した。最先端の低燃費化技術により岩質に応じた適正なエンジン回転速度が選べ、燃料消費量の低減を達成した。

【ホリゾン/製本工程の自動化を実現する断裁機 iCE TRIMMER HT―300】

印刷製本の最終仕上工程で本の三方裁ち処理をする断裁機。印刷製本業の自動化、省人化、生産性向上を推進する新商品群「iCEシリーズ」の第1弾となる。コンパクトな機械サイズのまま、同社従来品比で処理速度を4割向上。上流の製本機とのインライン接続によって本を自動投入するため、オペレーターを単純作業から解放する。

【堀場製作所/自動運転システム ADS EVO】

実験室で自動車の燃費や排ガスを評価するシャシーダイナモ試験において、人間のドライバーと同じように試験車両を運転し、試験を自動化する。各国規制が定めた指示車速通りに運転する高い追従性を持ち、バラつきのない試験結果が得られる。24時間連続や低温・高温環境での試験も可能。車両への搭載性も大幅に向上した。

【ミツトヨ/CNC三次元測定機 MiSTAR 555】

製造ラインに組み込んで使用する。温度変化に強い構造体を採用するなど耐環境性を向上し、測定器のサイズを小型化。塵やオイルミストなどによる汚れに強く、広さが限定されたスペースでも稼働する。また、計測ネットワークシステムを新たに開発。計測データの一元管理のほか、測定機の稼働状況の監視や予防保全をする。

【三菱ロジスネクスト/カウンターバランスタイプバッテリーフォークリフト「ALESIS(アレシス)】

機能性とデザイン性を両立した新型カウンターバランスタイプバッテリーフォークリフト。視界が広く、安全に乗降できる設計を採用した。車両の重心を下げて走行安定性を高め、旋回時の車体重心移動も低減して旋回時安定性も向上した。運転手の技能や作業に応じ加速力、反応、レバー特性などの走行・荷役フィーリングを調整できる。

【村田機械/高能力ケース搬送仕分けソリューション SHUTTLINER】

物流作業を効率化するケース搬送・仕分けシステム。軌道上を走るリニアモーター駆動の台車を多数台を用いた搬送機能と、台車に取り付けた正転・逆転可能なベルトコンベヤーによる仕分け機能の両機能を併せ持つ。台車はスムーズで無駄なく高速連続運転でき、移載ポイントで出庫・再入庫の双方向にケースを素早く移載する。

【安川電機/人協働ロボット MOTOMAN―HC10DT 防じん・防滴仕様】

高い防じん・防水対策を施し、従来難しかった切削油や水を浴びる環境下での作業の自動化を実現した。水洗いでき、これまで衛生面から導入が難しかった食品や医薬品の工場で使用できる。ロボット先端部に駆動用コネクターを配置したことで外部の配線が不要となり、安全でスマートなシステム構築も可能にした。

(2020/11/26 05:00)

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