(2021/1/4 05:00)
《増田賞》
【日立製作所/生体認証統合基盤サービス】
生体認証に決済連携、入退場管理などのさまざまなクラウド処理機能を付加したサービス。ユーザーは生体情報などの必要な情報を一回登録するだけで、飲食店やイベント会場などの対応施設で、手ぶらでのキャッシュレス決済やチケットレス入場が可能になる。
同サービスには、日立独自の認証技術「公開型生体認証基盤(PBI)」を活用した。ユーザー登録時に、生体情報を復元できない形に変換し、公開鍵としてクラウド上に保管。認証時は生体情報をセンシングして作り出した秘密鍵と公開鍵を照合して本人確認する。秘密鍵は本人の生体情報以外では再作成ができない。認証時のみに作成、破棄されるため安全性も高い。
《本賞》
【アマダ/3軸リニアドライブファイバーレーザマシン REGIUS―3015AJ】
ファイバーレーザー加工機のハイエンド機種。新世代タイプのリニアモーターを3軸に搭載したほか、さまざまな板厚・材質を最適な条件で加工できる業界初のレーザー制御技術も採用した。これにより、駆動速度が従来機比2倍の毎分340メートルという世界最速駆動を実現。形状精度が50マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下という超高速・高精度加工を可能にした。
自社開発のファイバーレーザー発振器は、高いビーム品質と独自のビーム制御技術によって切断性能を向上し、薄板から厚板まで高速・高品位に加工できる。また、自動で始業点検作業するオペレーション支援技術「LIS」により、段取りなど作業時間を減らせる。
【イシダ/AI画像認識システム profumo】
量り売りの総菜を人工知能(AI)による画像認識で自動判別して商品を登録し、レジ作業の省人化や省力化を実現するシステム。独自技術で容器や盛り付け具合に影響されず、高精度に画像認識できる。AIの学習は通常、数千―数万単位の学習用データが必要だが、学習させるデータとアルゴリズムの工夫で、数十枚の少ない画像で十分な精度を確保できる。認識速度は0.5秒以下。
従来、レジ担当者は多くて数百アイテムある総菜の商品名や番号など覚える必要があった。商品を一つずつ確認しながらのレジ打ち込みは作業性が悪く、習熟度でバラつきもある。同システムは、人手不足に悩む食品小売りの課題解決に貢献する。
【オークマ/大物部品の高精度・高能率生産対応門形マシニングセンタ MCR―BV】
オークマを代表する5面加工門型マシニングセンター(MC)の新旗艦モデル。機械精度を半自動で校正できる「3Dキャリブレーション」、加工空間の微妙な変化を見える化する「精度安定診断機能」など2019年に実用化したばかりの最新の高機能を標準搭載した。熱変位補正も上位の「サーモフレンドリー・プレミアム仕様」を採用。恒温室なしに機上で3次元測定機並みの計測ができる。
新主軸の高出力・高トルクと、X軸2倍、Y軸1.6倍の送り速度で切削能力も炭素鋼S45Cの場合で毎分1170立方センチメートルと33%向上した。搭載可能な加工対象物(ワーク)を拡大。切り粉搬送能力を毎時0.53立方メートルと2倍にし清掃の負担も低減した。
【島津製作所/2019新型コロナウイルス検出試薬キット(研究用試薬)/Ampdirect2019―nCoV検出キット(体外診断用医薬品)】
ノロウイルス検査試薬の技術を応用し、検査時間を従来のPCR検査と比べて半分の約1時間に短縮する。2020年1月下旬、世界保健機関(WHO)は感染拡大を受け「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言。パンデミック(世界的大流行)で感染有無を調べるPCR検査用試薬が不足する中、すぐに開発に着手。同4月に発売し、感染症対策に貢献した。
検体からリボ核酸(RNA)を抽出・精製する作業を不要にする独自技術で検査時間の短縮を実現。鼻咽頭からの採取検体に加え、検体採取者の感染リスクを低減できる唾液検査での有効性も早い段階で確認され、鼻咽頭拭い液と同様、保険適用の対象となった。
【ソディック/リニアモータ駆動超高速細穴放電加工機K4HL】
異なる穴径の長時間連続加工に対応する細穴放電加工機。自動運転や無人加工、高速・高効率加工を可能にする業界初の自動電極供給装置(AEF)と、自動AEF交換装置を開発。従来機に比べて最大15倍の1800穴の連続無人加工を実現する。
消耗した電極を自動で回収してAEFにストックした電極を自動供給することで、連続穴加工が可能となった。異なる電極径の連続穴加工にも対応できるほか、穴径に合わせて複数用意したAEF電極ストッカーと、コレットおよび下ガイドを自動交換する。段取りや再位置決めなどの作業が不要となるため、長時間の無人自動運転を実現する。
【ファナック/FANUC Robot CRX―10iA】
安全柵なしで人とともに作業できる新協働ロボット。使いやすさと安全性、高信頼性を兼ね備える。可搬質量は10キログラムでハンドリングや組み立て、溶接などの用途で活用する。
アームを手で直接操作する「ダイレクトティーチ」機能により、ロボットを扱ったことのない作業者でも簡単に操作できる。タブレット端末内のアイコンをドラッグ&ドロップするなどスマホ感覚で教示プログラムを作成可能。周辺機器メーカーが開発するグリッパーを装着・利用できるIoT(モノのインターネット)プラットフォーム(基盤)も提供する。
内蔵センサーによる接触停止機能で、人に触れるとすぐに停止する。92ミリメートルの隙間によりアーム間の挟み込みも回避する。ロボット全体でISO10218―1の安全認証を取得した。
【富士通/スーパーコンピュータ「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX1000」】
理化学研究所と共同開発しているスーパーコンピューター「富岳」の技術を用いた商用機。心臓部の中央演算装置(CPU)「A64FX」は電力当たり性能が極めて高く、さらに高性能積層メモリーの採用で高いメモリーバンド幅を持つ。ディープラーニング(深層学習)などで重要な半精度演算や整数内積演算にも対応する。
本体はラック当たり最大384台という高い実装密度により、最大130京フロップス(1秒当たりの浮動小数点演算性能)を超える理論演算性能の大規模システムを効率的に構築できる。新薬の開発や防災・減災など安心・安全な社会の構築、新素材開発、試作レスのモノづくりなど幅広い用途が期待されている。
【プレシジョン・システム・サイエンス/全自動PCR検査システム「ジーンリード エイト」】
病院や臨床検査機関でウイルスに罹患(りかん)しているかどうかをリアルタイムに診断したり、全自動で陰性・陽性を判定したりできる装置。PCR検査におけるウイルスからの核酸の抽出から増幅、検出までを全自動化した。医療従事者の負担軽減と同時に、検体の取り扱いの最小限化、感染リスク低減を実現した。
新型コロナウイルスをはじめエボラ熱、デング熱、ジカ熱、鳥インフルエンザなど、これから発生が予想される熱帯・亜熱帯の各種ウイルスや多様な検体、幅広い試薬メーカーに対応可能なオープンシステム機構としている。VIII型では8検体、XXIV型では24検体を同時かつ迅速に処理できる。
【メディカロイド/hinotoriサージカルロボットシステム】
国産初の手術支援ロボットシステム。「人に仕え、人を支える」を掲げて開発した。2020年8月に製造販売承認を取得。同12月に泌尿器科の手術で初めて使用し、無事成功を収めた。
執刀医は3次元映像を見ながら、内視鏡カメラや鉗子(かんし)などの医療器具が付いた4本のアームを操作する。アームの関節数を増やしてアーム同士が干渉せず、スタッフの動きも妨げない構造とした。
アームは人の腕に近い細さとした。人では難しい繊細な処置ができる。機体は従来の手術室においても使用できる大きさ。川崎重工業のロボット技術とシスメックスの医療機器関連技術を融合し、システム化した。
【安川電機/半導体ウエハ搬送用クリーンロボット SEMISTAR―GEKKO MD124D】
半導体ウエハー搬送ロボットはギアを使った構造のため、搬送時に発生する振動がウエハーへダメージを与える課題があった。同製品は自社製ダイレクトドライブモーターの採用により、把持するハンドの振動を従来機種と比べて10分の1以下、位置決め精度は同2倍と、生産性向上や低ダメージ搬送に貢献する。
またバッテリーレス化で予備品コスト削減も実現。モーターの位置情報を保持するためのバッテリーについて、これまでメンテナンスの課題だった交換作業の手間をなくした。
ほかにも駆動能力や拡張性を高めたクリーンロボット用標準コントローラーを開発。ロボットのパフォーマンスを最大限に引き出すことに成功した。
《日本力賞》
【エア・ウォーター/遠隔医療支援システム「NOALON」】
集中治療専門医と支援先の病院をネットワーク接続する遠隔医療支援システム。医師同士、医師と看護師などをリアルタイムに結び、離島の診療所などでも高度な診療を支援する。病室外から患者の容体確認ができるため、人同士の接触を減らす新型コロナウイルス対策にも有効。国内の集中治療専門医が少ない課題を見据え、特に地域の急性期医療対応も図れる。
患者映像や生体モニター、電子カルテ情報など各医療機器の情報を1画面で表示して、遠隔地と同時に確認できる。円滑なコミュニケーションに向け、テレビ電話や、タッチペンで画面上に指示を書き込める機能などを設けた。データを統一フォーマットへ変換し、約900種類の医療機器が接続できる。
【クラボウ/ケーブル配線の自動化3Dビジョンセンサ「Kurasense―C100」】
電線やケーブルを認識するための3Dビジョンセンサー。一般的なセンサーは、硬く形状が決まった定型物しか認識できない。一方、同製品は毎回形状の違うケーブルを認識でき、従来は人手に頼っていたケーブル配線作業を自動化できる。
独自のアルゴリズムにより、従来のCADマッチングでは認識できなかったケーブルの3D形状を認識できる。画像処理は1秒間に20回と高速で、揺れているケーブルも認識できる。ロボットとは、LANケーブル1本で簡単に接続できる。
外観検査装置などの開発で培った高速画像処理技術と3D計測技術を生かし、完成した。ケーブル配線用途以外にも線状の対象物であれば認識でき、さまざまな分野での展開を見込んでいる。
【国際計測器/フラットロードタイヤ総合試験装置】
全長50メートルの路面走行による試験を可能にし、従来のタイヤ試験装置の課題を解決した。室内で気象条件やドライバーの個人差に左右されず、安定した性能試験ができる。ドラム式試験装置で曲率の影響を受けたり、フラット式ベルト駆動タイプ試験装置でベルトの横流れで誤差が発生したりする問題がない。
スリップ率、接線力、トルク、コーナリングフォースの制御方式を試験目的に合わせて切り替えられる。サスペンションの上下動を模した振動動作と横力、駆動、制動の各制御を組み合わせて実車走行同様の負荷試験を実現した。世界の各地域の実路面と同様の摩擦係数と、空間周波数を合わせた路面を採用して試験ができる。
【住友重機械工業/BNCT治療システムNeuCureならびにBNCT線量計算プログラムNeuCureドーズエンジン】
京都大学複合原子力科学研究所(大阪府熊取町)との共同研究で開発した医療用中性子照射装置で、2020年春に厚生労働省から新医療機器として承認を取得した。がんの放射線治療の一種であるBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)に使用する。医療機関から求められる安全性や安定性を重視し、システム全体も小型化した。
併せて照射条件や腫瘍の輪郭情報を基に、BNCTで与えられる線量分布を計算するプログラムも承認を得た。これらにより、局所進行もしくは局所再発の頭頸部(けいぶ)がんへのBNCTに対応する。BNCTは臨床研究で日本が世界をリードする治療法とされており、長期的に累計で100カ所以上の施設への導入を目指す。
《モノづくり賞》
【IHI/陰圧隔離室(簡易陰圧テント)】
グループ会社のIHIアグリテック(北海道千歳市)と開発した。室内に陰圧下の隔離エリアを設けられる。陰圧隔離テントの条件である空気の循環回数が1時間に12回以上、差圧(陰圧度)2.5パスカル以上を満たしている。陰圧室を備えていなかったり、不足していたりする病院などでのニーズを取り込む。幅2500ミリ×奥行き1650ミリ×高さ1800ミリメートルで、重さが13キログラム。女性2人が15分ほどで組み立てられる。
同テントは、オゾンとHEPAフィルターを用いた空気清浄機「eZ―100」などと組み合わせて利用する。新型コロナウイルス感染症が再び拡大しており、隔離に加えて飛沫(ひまつ)感染や接触感染対策に役立つ。
【シチズンマシナリー/主軸台移動形CNC自動旋盤 Cincom L32 残材削減機能搭載機】
最大加工径32ミリメートルの主軸台移動形CNC自動旋盤「Cincom L32」に、加工後に残ってしまう材料を削減する機能を搭載した。摩擦熱と加圧作用により材料を接合する独自技術を用いて、接合クランプ装置で把持した残材と次に供給する新材を接合。残材を新材同様に加工できる。
残材は従来、長さ200ミリ―300ミリメートルだが、これを5分の1程度まで減らせる。材料を最大限に有効活用し、環境負荷の低減や材料費用の削減が図れる。摩擦接合時に材料を強固に把持し、材料滑りのない最適な接合圧力をかけることで、良好な接合品質を実現する。汎用性のある機能として開発しており、他機種への水平展開も容易だ。
【不二越/高速・高機能ロボット「MZ25」】
可搬質量25キログラムの6軸垂直多関節ロボット。最大リーチは1882ミリメートルと広い動作範囲を実現する。強力な手首トルクを備え大型の加工対象物(ワーク)やハンドに対応する。ワークを生産設備などに着脱する「マシンローディング」や組み立て、バリ取りなど幅広い用途で活用できる。アームの軽量化と高剛性を両立することで位置繰り返し精度はプラスマイナス0.05ミリメートル。高速高精度動作を実現した。
同シリーズの特徴となる独自の中空手首構造を改良した。中空径を従来機種より、30%大型化し、電源線やカメラ、エアチューブなどの配線・配管をアーム内に内蔵する。周辺装置との配線類の干渉リスクが低減でき、信頼性も向上した。
(2021/1/4 05:00)