(2021/4/19 05:00)
自由と民主主義を守り、公正なルールの基で経済成長をはかる。日米両首脳が発信したメッセージは、分断が進む世界にインパクトを及ぼす歴史的なものとなった。産業界が目指すべき方向もより明確になった。
菅義偉首相と米バイデン大統領が会談し、安全保障、経済、気候変動など幅広い分野での同盟関係の拡大が合意された。
とりわけ中国の力による現状変更に反対し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、東南アジア諸国連合(ASEAN)などとも連携していく姿勢を鮮明にした意義は大きい。
共同声明には、52年ぶりに台湾海峡の平和と安定の重要性が明記されるなど、日本が大きな覚悟と決意をもって会談に臨んだことがうかがえる。
ただ、バイデン政権が初の対面での首脳会談に日本を選んだ背景には、中国を孤立に追いやるのではなく、対話による関係正常化を求めているのは明らかだ。威圧で周辺国に影響を及ぼす姿勢に毅然(きぜん)と対応しつつも、長い時間軸の中で課題解決を模索することに理解を示した。
日本にとって中国は隣国であり、最大の貿易相手国でもある。さらに日本はASEAN各国とも信頼関係を結んでいる。公正なルールや国際秩序がアジアに広く浸透することが地域の発展に直結する。日米が協力してその枠組みを作り、中国を包含していくことが重要である。
日本の産業界は今回の首脳会談の成果を前向きに受け止め、自社の成長の方向性を固める必要がある。短期的には中国による経済的な反発にも備えるべきだろう。特定の国に過度に依存したサプライチェーンの見直し、半導体やレアアースなど戦略物資の確保を急ぐ必要がある。脱炭素への取り組みも加速させなければならない。
長い目でみれば、中国が公正なルールに基づく経済活動に参画していくことは、日本および世界経済に大きな恩恵を及ぼすことになる。
日米両国が発したメッセージを中国に正しく伝え、粘り強く行動を促す。日本が果たすべき役割は大きい。
(2021/4/19 05:00)