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(2021/4/26 05:00)
生活の中に“香り”のヒント
(総合1から続く)慶応義塾大学理工学部在学中から花王に魅力を感じ、入社を希望していました。入社を視野に入れ、界面活性剤に関する研究ができる研究室を選びました。同大学大学院卒業後、念願の入社を果たしました。
入社後は香りを研究、開発する部署で「エバリュエーター」という仕事をしています。シャンプーを泡立てた時にリラックスした気分を感じてもらえるようにするなど、香りの世界観や種類などの方向性を決める“プロデューサー”のような役割です。
ヘアケア製品の香りは、洗うとき、すすぐとき、乾かすとき、どのタイミングでどんな香りがしてほしいか、生活の文脈を意識して開発します。「このタイミングで、こんな気持ちを、香りによって実感してほしい」という理想が実現したときには大きなやりがいを感じます。
実際に香料を混ぜて香りを創るのは調香師です。私は目に見えない香りを言葉や図で伝えなければならず、今も苦労します。日常的に多くの香りをかいで評価能力を鍛えているほか、読書などで言葉による表現力も磨いています。逆に写真や画像を見て、自分ならどういう香りを付けるか、考える訓練もしています。
話しやすい環境作りも、私の大切な仕事です。創作した香りはお客さまの使用場面に沿って評価しますが、評価は3人以上でします。調香師はもちろん、同僚や上司との連携も欠かせません。感謝の気持ちを持つだけでなく、伝えるようにしています。香り創りは日常生活にヒントがあるため、普段はアンテナを張りっぱなしです。休日は料理や筋トレなど、意識的に仕事を忘れて頭を空っぽにする時間をとっています。(文=門脇花梨、写真=森住貴弘)
◇花王 研究開発部門感覚科学研究所研究員 粕尾優衣(かすお・ゆい)さん
(2021/4/26 05:00)