(2021/6/7 05:00)
カーボンニュートラルの推進が、エネルギー供給の多様化につながる方法を考えてほしい。
政府の2021年版エネルギー白書は、脱炭素に向けた課題と取り組みの分析に力を入れた。政府のカーボンニュートラル宣言とは無関係に、企業による自主的な取り組みが加速していると評価。2050年の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロの目標達成に向け自信を示した形となった。
同時に白書では、水素や燃料アンモニア、蓄電池、資源循環などグリーン成長に向けた14分野で日本の特許競争力を調査した。日本は14分野すべてで4位以内にあり、特に「水素」「自動車・蓄電池」「半導体・情報通信」「食料・農林水産」の4分野で首位だった。食料は意外だが、農業機械などの技術力がグリーン化の武器になると分析した。
細かく見ると、人工光合成やポリカーボネートなどCO2を資源利用する「カーボンリサイクル」技術にも強みがあり、モノづくり力を生かしやすい。こうした技術を社会実装していく支援が必要だとしている。
民間の事業展開や技術開発の努力が、脱炭素に貢献するという認識は間違っていない。しかしエネルギー問題で最も重要な供給力の将来展望が、白書の分析から見えてこない。
政府の脱炭素宣言を受け、民間企業からは天然ガスや石炭を水素やアンモニアに置き換える構想が相次いでいる。しかし、それを事業計画に移す大前提となるのは燃料の製造コストだ。関連企業トップは「再生可能エネルギーを、競争力のある価格で得られることを想定している」と話す。
現状の日本の再生エネを増やしても、国際価格より大幅に上回る。水素などの生産プラントは海外に立地し、日本の技術力はプラント機器の輸出にしか生かせない。水素利用が広がっても、その大半が輸入頼みでは安定供給に不安が残る。
化石燃料の海外依存度の高さが日本の産業の構造的弱点だ。脱炭素と並行して、エネルギー自立の道を模索したい。
(2021/6/7 05:00)
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