第51回機械工業デザイン賞IDEA、栄誉に輝く18製品

(2021/7/1 05:00)

審査概要/専門審査委員代表(千葉大学名誉教授)青木弘行

高度経済成長期の1970年(昭45)、日刊工業新聞創刊55周年記念事業として発足した「機械工業デザイン賞」は、経済産業省・文部科学省・特許庁・日本商工会議所・産学6団体の支援を受け今日に至っている。

今回、応募は32社37件(内、大企業18社19件、中小企業14社18件)と、昨年と比較し増加に転じ、特に中小企業の応募が倍増した。

審査は、3月12日開催の「第一次審査委員会(書類審査)」で、現物審査対象製品19件を選定。感染に最大限の注意を払いながら4月12日から5月21日まで延べ18日間にわたり「第二次現物審査(出張審査)」を行った。専門審査委員ごとに評価・採点、「専門審査委員会」での意見交換を経て、6月11日開催の「総合審査委員会」で慎重審議の結果18件を選定した。

今回の応募製品を総括すると、従来技術の高度化や熟成に代表されるハード開発の優位性を誇示する製品が多数を占めた。一方では、ハードのコモディティー化打開策としてIoTを基盤としたソフト開発に活路を求め、優れた操作体系を誇示する製品が約半数を占めた。デザインを狭義ではなく広義に解釈する本顕彰制度の趣旨からすると、これらソフト機能の充実策やハードとソフトの融合策、ハードのソフト化・ソフトのハード化は非常に好ましい状況にあり、過去の受賞製品群と比較してその完成度は格段に向上している。

開発担当者や現物審査に立ち会われた関係各位に対する感謝の念と共に、専門審査委員を代表して深く敬意を表したい。

最優秀賞(経済産業大臣賞)

アマダ/超高速3軸リニアドライブ・ファイバーレーザマシン「REGIUS-3015AJ」

軽量・高剛性のフレームを開発し、加工速度と精度を高めた。監視や点検などの各種段取り作業を人工知能(AI)が自動で実施する支援機能の搭載により、機械の安定加工とダウンタイムゼロを実現した。また、レーザー光の漏れを防ぐフルカバーパーテーションに光沢のある黒を配色することで、力強さと気品のあるデザインに仕上げた。パーテーションには大型モニターを埋め込み、加工機内部の視認性を安全な手法で向上させた。

島津製作所/遺伝子解析装置 AutoAmp

新型コロナウイルス感染症のPCR検査に利用する。全自動のため人為的な作業ミスを防ぎ、安定した解析結果を得られる。本体とパソコンで構成し、同ウイルスを検出する推奨試薬を使い、約90分で分析が行える。幅305ミリ×奥行き655ミリ×高さ660ミリメートルと省スペースで、最大4検体までを同時に検査できる。正面に曲面を取り入れ、圧迫感を軽減。多忙な医療従事者でも簡単に使えるよう、直感的に操作できるレイアウトとした。

日本力(にっぽんぶらんど)賞

古河ロックドリル/全自動ドリルジャンボ J32RX-Hi ROBOROCK

山岳トンネル施工現場で、熟練作業員でなくても1人で高精度のせん孔ができる全自動ドリル。せん孔計画に沿ってガイダンスするナビゲーション機能に加え、逆運動学を用いたブームの自動位置合わせ機能でコンピューター制御を可能にした。作業の効率化・高精度化とともに、生産性向上で工期短縮に寄与する。安全性も向上する。

ホリゾン/全自動紙折機 iCE FOLDER AFV-56Kシリーズ

製本ラインの上流工程で紙折り処理を全自動で行う。12・1インチのタッチパネルで直感的に操作でき、用紙のサイズや折形などの選択でセットアップが完了する。従来機と比べて、自動調整の箇所も増やすことで、手動調整を極力減らした。極小ロットに対応する生産性や拡張性、外観、低騒音などにもこだわった。

日本商工会議所会頭賞

キャニコム/林内作業車 フォワーダやまびこレインジャー BY510

林地での木材運搬や搬出作業向けに開発した。狭い作業路内での旋回による転落のリスクを低減し、搬出の安全性を高めるためにスイッチバック(旋回しなくて済む)設計とした。木材を横積みする方式を採用し、積載時の車両のバランスに配慮するとともに、長尺材も搬出可能。また横転を警告する機能も搭載した。

碌々産業/高精度高速微細加工機 CEGA-SSSシリーズ

低速から高速回転領域に幅広く対応できる高性能主軸を搭載した。荒加工から高精度・高品位加工まで1台で載せ替えなしで加工することで工程集約し、生産性を向上させている。3画面構成の操作パネル搭載で操作性向上に加えて「マシニングアーティストに微細加工機を操る悦(よろこ)びを与える」という。

日本産業機械工業会賞

ファナック/全電動射出成形機 ROBOSHOT α-SiBシリーズ搭載表示装置 PANEL iH Pro

業界最大の21.5インチの表示装置を射出部の前面ドアに搭載した。ドアを閉じた状態では表示装置が機体中央に位置し、動作条件の設定操作がしやすい。動作条件設定、成形プロセス表示、周辺機器情報などの画面を二つ同時に表示可能。作業に応じて表示情報を最適化でき、操作の負担が減る。

日本工作機械工業会賞

ニイガタマシンテクノ/5軸制御横形マシニングセンタ HN80E-5X

航空機部品加工や難削材加工での一層の大型加工対象物(ワーク)の5軸加工ニーズに対応する。構造解析による本体強度の向上と、油圧力でのA軸サポートにより、4軸機と同じ切削条件での加工を可能とした。鋭角な造形でシンメトリー性を強調して堅固さを表現しつつ、白と黒でコントラストを際立たせて重厚な印象を持たせた。

日本電機工業会賞

三菱電機/三菱電機モータ診断装置 DiaPro Motor

独自の解析技術により、モーターの電流信号だけで電気系と機械系の異常を高精度に検知し、点検を省力化する。モーターの故障は生産ラインの停止に直結するため点検が欠かせない。非熟練者も使いやすいように、本体に段差を設け、情報表示と操作のエリアを明確に区分。不用意に操作ボタンに触れることによる誤操作も防ぐ。

日本ロボット工業会賞

安川電機/多用途適用型小型ロボット MOTOMAN-GP4

ロボットアームに丸みを帯びたデザインを採用したことで有効動作領域が拡大し、省スペース化も実現した。設置に制約があった場所にも適用できる。給電ケーブルなどは底出しと側面出しの2方向から選択可能。可搬質量4キログラムの6軸ロボットで小型部品の組み立てや搬送、箱詰め、検査など幅広い工程で活用できる。

日本デザイン振興会賞

キヤノン電子/歯科用ミリングマシン MD-500

歯科向け補綴(ほてつ)物の切削加工システム。高速、高精度、高品位な加工とともに小型化、使いやすさを両立させた。X、Y、Z軸を1フレームベースに集中配置して剛性を高め、加工精度を向上。ドリルの先端の振れが少ないホルダー固定の主軸とリニアガイドとボールネジの構成で精密な位置決めを可能にし、安定加工を実現した。

日本デザイン学会賞

ミツトヨ/CNC真円度・円筒形状測定機 ROUNDTRACER EXTREME

真円度や輪郭形状、表面粗さの測定を1台に集約。専用の測定機で加工対象物(ワーク)を都度セッティングする手間を省いた。また新たに開発した電動スライド軸などを搭載してワークの干渉を回避し、連続自動測定を可能にした。X軸カバーは内蔵物を最小限にまとめ、ウエーブラインを取り入れるなどして軽快感を出した。

審査委員会特別賞

石川エナジーリサーチ/測量・点検用ドローン ビルドフライヤー

マグネシウム合金をフレームに採用した工業向け飛行ロボット(ドローン)。超軽量、高剛性の機体で5キログラムの荷物搭載で25分連続飛行が可能。工具不要で折り畳め可搬性に優れ、着陸脚跳ね上げ機構で映り込みのない広範囲撮影ができる。合金フレームは紫外線での強度劣化がなく、制御機器を内蔵してヒートシンクの役割も果たす。

キヤノン/ロボティックカメラシステム CR-S700R

静止画用カメラを取り付ける専用の雲台と制御装置などをネットワークで結び、遠隔操作による撮影を可能にした。レンズ光軸中心の回転方式を採用したほか、パンやチルト、ロールといった撮影に必要な動作の回転方向を円弧形状になるように設計。雲台の電源が入っていなくても動きを直感的に予想し、設置できるようにした。

芝浦機械/高生産・低環境負荷型ダイカストマシン DC1100R-E/DC1300R-E

自動車の軽量化に向けたアルミニウム部品の使用拡大を意識したダイカストマシン。大型機電動トグル機構採用で、型開閉速度向上と周辺装置とのラップ動作によるドライサイクル短縮を実現した。油圧式トグル機との比較でサイクルタイムを17%短縮し、二酸化炭素(CO2)排出量も12%削減。新制御装置で操作性も向上した。

タダノ/トラック式高所作業車 AT-320XTG

8トン限定の中型免許枠の製品として開発。ユーザーの「より高く、より広い作業範囲を」の声に応え、最大地上高さ27メートルの従来車と同等の車両寸法で、同高さ32メートルを実現した。大型クレーンで培ったブーム軽量化技術と製造技術を活用し、公道走行時も27メートル車と同感覚で運転できる。最大積載量100キログラムで大型荷枠の標準装備が可能になった。

東光鉄工/産業用マルチコプター 東光レスキュードローン「TSV-RQ1」

2重モノコック構造で毎秒18メートルの強風に耐え、豪雨でも出動できる防塵・防水性能を備えるなど、防災・減災用途に特化した飛行ロボット(ドローン)。洋上や水上での使用時に万が一墜落しても、浮力性能により機体を回収できる。最高速度は時速60キロメートル。空気抵抗の少ない流線形ボディーを採用し、機体カラーは悪天候でも目立つオレンジ色にした。

フジテック/標準型マシンルームレス・エレベータ「エクシオール」

衛生面に配慮し非接触ボタンを採用した。一般用液晶表示を5.7インチから8.4インチに拡大し視認性を向上。エレベーター専用クーラーを標準装備し、真夏でも快適な空間を提供する。標準機種で最大定格速度分速120メートルに対応し、待ち時間を短縮。乗り場のインジケーターに、かご内の混雑状況を5段階表示する機能も設けた。

(2021/7/1 05:00)

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