産業春秋/がん治療の新技術

(2021/8/5 05:00)

がん治療中の知人に見舞いのつもりで電話をしたら、放射線治療の後で「気分が悪く会話に集中できない」と絞り出すような声が返ってきた。副作用について理解が足らない自分を恥じた。

横浜市立大学医学部講師の梅村将就さんは、特定周波数の交流磁場による物理的な刺激で、がん細胞が小さくなることを発見した。マウスによる実験の域を出ていないが、将来は治療装置を開発し「血液透析のようにクリニックでがんの外来治療ができるようにしたい」と話す。

特定周波数の交流磁場を当てると、がん細胞の代謝が乱れるからでは―科学技術振興機構(JST)はこの技術の将来性を評価し、2020年度創発的研究支援事業に採択した。梅村さんは今後、課題であるメカニズムの解明に挑む。

技術が確立すれば治療は1時間以内で済み、患者の生活の質を高める効果が期待できるという。薬剤を使わず磁場だけで治療するため医療費の抑制につながる可能性もある。

がん治療で苦しむ患者に医療はどこまで寄り添えているか。近所のクリニックで外来治療が受けられたら、患者の心身の負担も軽減するだろう。内科医の臨床経験を生かし、患者に優しい医療を実現してほしい。

(2021/8/5 05:00)

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