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(2021/8/23 05:00)
「リュウグウ」の砂分析に歓喜
(総合1から続く)大学で発生生物学を学び、再生医療に興味を持ったことから京都大学大学院理学研究科に進学しました。でも就職活動は意図的に方向転換して、分析機器メーカーを志望しました。生物学はAとBを比べてBの方が強く光っているなど、研究の評価や結果が相対的です。でも、客観的に真実を他人に伝えて納得してもらうには、しっかり定量分析しないといけないと考えたからです。
入社し半年が過ぎた頃、フランス印象派の画家クロード・モネの大作を分析する大仕事を任されました。蛍光X線分析装置で誰も計ったことのない大きな絵画をどうすれば適切に傷つけず分析できるか考えました。
小惑星「リュウグウ」の試料分析への挑戦に抜てきされたのはこの後すぐ。学術的なことに興味があったので楽しい半面、とてもしんどかった。分析機器メーカー向け資料では探査機「はやぶさ2」が持ち帰る試料の量は1ミリグラムしかない可能性も示唆されてました。1ミリグラムとはどれくらいなのか、調べるのはそこからです。蛍光X線分析装置は100グラムなどの試料分析が通常で、ハードルはものすごく高い。ちょうど年末年始の時期。クリスマスも正月も砂のことばかりを考えていました。およそ1カ月がかりで1ミリグラムの砂を非破壊・非接触で高精度に計れる治具を開発。理化学研究所の大型放射光施設「スプリング8」でも5ミリグラムが限界で、放射光の先生から高評価を頂きうれしかったです。堀場製作所グループのブランド力が高まり、米航空宇宙局(NASA)などから分析依頼があればうれしいです。
休日は散歩などでリラックスしてます。昼と夜で風景が違う嵐山が好きです。(文=松中康雄、写真=田山浩一)
◇堀場テクノサービス 分析技術本部アナリティカルテクノロジーデパートメントエナジー&エンバイロメントチーム 森田麻由(もりた・まゆ)さん
(2021/8/23 05:00)