モノづくり日本会議 モノづくり力徹底強化検討会・第14回勉強会「シーメンスが考える産業用として求められるエッジコンピューティングとは」

(2021/9/8 05:00)

モノづくり日本会議は7月30日、モノづくり力徹底強化検討会第14回として、シーメンスデジタルインダストリーズファクトリーオートメーション部の雨宮祐介グループマネージャーによる講演「シーメンスが考える産業用として求められるエッジコンピューティングとは」をオンラインで開催した。IoT(モノのインターネット)やデータの利活用などさまざまな側面から注目されているエッジコンピューティングに関しては、多くのデバイスが市場に現れた。講演を通じて、各企業の工場に最適な課題解決法は何か、考察した。

現場データをリアルタイム活用

  • シーメンス デジタルインダストリーズファクトリーオートメーション部ビジネスデベロップメントグループ グループマネージャー・雨宮祐介氏

当社は制御機器業界では世界のマーケットシェアナンバーワンで、産業用ソフトウエア会社を買収するなど、工場に必要な制御機器とソフトウエアで世界をリードしている。

時代はデジタルで、大きな変革を迫られている。より価値が高く、よりコスト競争力のある製品を、他社に先駆けて市場に投入しなければ負ける時代だ。この難題を解決するのがデジタルツインだと考える。完全なデジタルツインを製造業のお客さまに届ける。

デジタルツイン

バズワードである「デジタルツイン」について、当社は三つを挙げる。まず製品そのものがバーチャルで実現する「デジタルツインプロダクト」。製品のシミュレーションやテストを、バーチャルの中でデータを使って、プロトタイプを作成せずに行える。

二つ目は製品を作るための製造ラインやマシンをバーチャルで実現する「デジタルツインプロダクション」。三つ目はリアルな世界のマシンや生産工程が生成するデータによる「デジタルツインパフォーマンス」だ。実際のマシンから出たデータを活用して、新たな価値を創造する。これら三つを構築し、連携することで、製品をより早く市場に提供できる仕組みを作る。

データの利活用と聞くと、クラウドを想像する方が多い。クラウドはビッグデータを保存したり、グローバルで活用できたりといった特徴がある。一方、リアルタイム性ということで注目されているのがエッジコンピューティングだ。

現場にデバイス

クラウドで実現しているIT技術を、現場に導入し、リアルタイムで活用し、現場に直接インパクトを与える。現場にデバイスやコンピューティングパワーを導入して、オートメーションを直接強化するというわけだ。

機械メーカーや製造業の皆さまは、データの利活用に興味があるはずだ。そうした声に応えるために当社は「インダストリアルエッジ」を提供している。これはマシンデータを最大限に活用するために、ITを現場で将来において利用可能とするもの。管理を容易にし、安価に実現できるオープンソフトウエアプラットフォームだ。

三つの要素があり、まず「インダストリアルエッジハブ」は当社が運用するアプリやマネジメントソフトウエアのリソースなどをダウンロードできるもの。二つ目の「インダストリアルエッジマネジメント」は、エッジデバイスのハードウエア管理やソフトウエア管理を行う三つ目の「インダストリアルエッジデバイス」は、マネジメントソフトウエアから利用できる状態にするアプリを、実行するためのデバイスだ。

当社が産業用にカスタマイズしたアプリは、深い知識がなくてもデータのフローを作成し、データの取得や処理、転送を行える。例えば、現実世界のマシンと仮想世界のシミュレーションのデジタルツインを構築し、仮想世界のシミュレーションモデルからデータを取る。リアル世界では見えなかったデータを取得したり、近未来の動作を予測して、制御の補助や予知保全などに寄与する。

例えば食品業界の、熱を利用したビニールのパッキングマシンの場合、ローラーのヒーター温度がパッキング品質に影響する。しかし、ヒーターは回転していてセンサーを付けて温度計測できない。そこでアプリを用いてデジタルツインを作成し、バーチャルセンサーで制御を最適化する。

最適なエッジを

エッジコンピューティングのソリューションは数多くあるが、重要なことを三つ挙げたい。まず将来性のあるシステムかどうかだ。デジタル化は1年や2年では終わらない。常に新たな技術を取り込み改善する。例えばアプリは、当社だけでなくサードパーティーや独自で作成したものを使用できるオープン性を確保している。

次に管理が容易であること。エッジの多くはIT危機やクラウドとつなげる目的で使用され、多くのデバイスが工場に設置されているからだ。当社の場合インダストリアルエッジマネジメントで、IT管理を一括で請け負う。

最後に、安価に始められるかどうかも重要だ。エッジコンピューティングにどんなメリットがあるかまだ手探りのところも多いと思う。当社のエッジは年間契約のサブスクリプション方式で、デバイスについても安価な使用料で、エッジを活用いただける。

エッジは工場デジタル化のキーデバイスとなる。将来性、管理性、価格体系において、自社に最適なエッジとは何かを、いま一度検討してはどうだろうか。

(2021/9/8 05:00)

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