(2021/12/10 05:00)
21日までという短い会期の臨時国会でも、補正予算関連の法律の審議はある。半導体工場の国内誘致補助金創設などを目的とした経済産業省の法案も、そのひとつ。6日に閣議決定した。
説明資料に「デジタル敗戦」という言葉をためらいなく使い、現状を「わが国デジタル産業の凋(ちょう)落」と分析した。同省幹部は「30年間の行政官としての経験は、まさに衰退とともにあった」と苦しい胸中を吐露する。
その率直さに胸を突かれるものがある。わが国の半導体産業の復活を、かつての技術移転先であった外資に頼らざるを得ない現状は、往事を知るものには目を背けたくなる。
日本の産業界には今も多くの強い分野があり、技術力も優れている。しかしヒジネスの成功体験は日々に失われ、勝ち方が分からなくなっている。前例のない施策を、試行錯誤しながら挑戦していくしかないのがもどかしい。
コロナ禍での給付金やワクチン接種のたびに多額の事務費がかかる現状もまた、日本のデジタル敗戦の象徴だ。マイナンバーカードを拒絶したり、押印手続きにこだわったり、我々の身の回りにもデジタル化を阻む要素は数多い。敗戦復興への道は、半導体戦略ばかりではない。
(2021/12/10 05:00)