産業春秋/カーリング支える匠の技

(2022/2/23 05:00)

北京冬季五輪カーリング女子で日本チームが接戦を勝ち抜き初の銀メダルに輝いた。追い込まれた時の個性を生かした結束力は、コロナ禍で気分が沈みがちな国民を元気づける。

日本カーリング協会に登録する競技者は約2500人で横ばいが続く。だが世界的な競技の普及でストーン材料に適した希少な英スコットランド産の花こう岩は将来の資源枯渇が懸念される。

長野精工金属(長野県茅野市)は金属材料の加工技術を応用し、摩耗したストーンを研磨で再生する技術を実用化した。「天然石は金属材料と違い、材質が一つひとつ異なり加工は難しい」と社長の矢島哲男さん。技術の確立に6年を要した。

ストーンの底には氷の粒と接する環状のランニングバンドがある。直径約13センチメートル、幅約5ミリメートルのバンドの精度がストーンの性能を決める。研磨機にかけた後は職人の目測と勘が頼り。バフ掛けでバンドの縁に丸みを付け、滑らかな曲がりをよみがえらせる。

刻々と変化する氷の状態と「石の個性を読むのが面白さ」と競技者から聞いた。水と鉱物という自然相手のカーリングは科学的に未解明な点が多く神秘的でさえある。職人の暗黙知が競技の奥義を支えるのもうなずける。

(2022/2/23 05:00)

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