産業春秋/震災の記憶を風化させるな

(2022/8/25 05:00)

〈上野から海が見えたの騒ぎなり〉。関東大震災で東京の下町は焦土と化した。川柳作家の前田雀郎はあまりの惨状に驚愕(きょうがく)する人々を活写している。

9月1日は防災の日。関東大震災から99年になる。マグニチュード7を超す地震が立て続けに昼の炊事時を襲った。東京や横浜の市街地は瞬く間に猛火に包まれ、10万人を超す犠牲者を出した。

祖母から聞いた震災体験は昨日のことのように鮮明だった。北関東でもかなりの震度だったらしい。「自転車はハンドルをとられて進まず、電柱は右に左に大きく揺れた。夜には東京の方角で空が赤々と燃えるのを見た」。

今夏、東日本大震災の震災遺構仙台市立荒浜小学校を訪ね、児童や住民らが津波から避難した4階校舎の屋上に立った。何という静けさだろう。風の音しかしない。松並木がふぞろいに残る海岸線まで約700メートル。集落の跡地には公園広場など緑地帯が広がる。

震災対策は記憶の風化との闘いだ。実体験のない世代へ命を守る行動を引き継いでいかなければならない。小中高生を対象に「つなぎ手」をつくる人材教育を体系的に実施できないか。地域の企業や大学も講師を派遣するなど協力できることがあるはずだ。

(2022/8/25 05:00)

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