(2022/10/24 00:00)
仲代金属(東京都足立区、安中茂社長、03・3605・7730)は我が国が世界に誇れる超精密スリット加工会社だ。切りにくい素材の代表格であるアモルファス(非晶質)合金を100分の1ミリの精度で切る。スリット加工可能な材料は軟硬質材を問わないが、特に切断バリが発生しやすい軟質材をはじめ、ニッケル、アルミニウム、銅などを加工する際に生じるバリ(突起)をゼロ極限に抑えた「バリレス加工」を実現したうえ、スリット上の反り返りも解消した。また、アモルファス加工技術を応用した「鏡面切り加工」は自動車や電気製品の安全性、小型軽量化を支え、産業社会に貢献している。
仲代金属は1974年の創業以来、48年目を迎えた。創業者の安中茂社長(78歳)は15歳の時から60年以上、金属スリット加工一筋の人生を歩んできた。極箔・極細のスリット加工で他の追随を許さない企業に成長している。
独自設計の加工機、600種類の刃物、巻き取り技術に“匠の技”が融合
「切れない金属はない」(安中社長)と豪語する理由は、独自設計した専用の加工機(スリット機、シートカット機)開発、600種類に及ぶ刃物と独自技法による13種類の刃組み、独自に考案した治具で全長数千メートルの長尺な金属箔を巻き取る技術、さらに技術者の“匠の技”だ。これらに加え、クリーンルームの設置、1日に2回の清掃により「100分の1ミリの金属異物も出さない」管理体制を築いている。
仲代金属の技術力を証明するのが「鏡面切り加工品」だ。スリット加工の“顔”は切断面になる。最高の切れ味の切断面は鏡のようになるため、「鏡面切り」と命名した。
リチウムイオン電池向けタブリード材を月1億本分出荷、金属異物対策も万全
現在、需要が増えているのは電気自動車(EV)などに搭載されるリチウムイオン電池の電池セル内部から電気を取り出すためのリード線「タブリード材」だ。電池換算で月1億個、累計で数十億個を出荷している。タブリード材は0.1ミリ単位の切り幅オーダーに対応し、数百メートル分をリールに巻き付けて納入する。新潟工場(新潟県阿賀野市)でも、車載用電池向けスリット加工が軌道に乗っている。既存のスリッター機を改造したタブリード材専用機が2019年初めに1台だったが、これを3台体制とし、本社の加平工場だけで行っていた広幅材料のタブリード向け中間切り工程(大割り)を導入し、加平工場と同様に金属異物対策も完備する。リチウムイオン電池のタブリード材は、微細なバリが電解液の漏れを招き、金属異物や炭素類が過電流(ショート)の原因となるため、受注増は技術力に対する「信頼の証」だ。仲代金属の売上高を占める車載向けの比率は80%に達し、21年7月期の売上高は前年度比約35%増と好調に推移している。
産学連携で四角線コイル開発へ 携帯用電池の試験片でJIS認証
仲代金属は産学連携で四角線コイルの開発も進めている。スリット四角線の表面に絶縁被膜を施すことにより電線としての機能を備え、従来の丸線と比べ占積率が約30%向上する。モーターなどの小型軽量化に貢献する。
また、「JIS C8714:2007 携帯電子機器用リチウムイオン蓄電池の単電池および組電池の安全性試験」に用いられる試験片「ニッケル小片L字」の試作から量産までを日本で初めて手掛け、日本産業規格(JIS)の認証を取得している。この試験片は厚さ0.1ミリのニッケル箔を0.2ミリ幅に切断し、2つの辺がそれぞれ1ミリになるようL字形に折り曲げる。安全性にかかわるだけに高度な技術、仕上がりが要求される。これも仲代金属の技術力の証明だ。
次代を担うリーダー
「技術に重きを置いて事業継承」桒原 取締役
「オペレーターを育成」原 加平工場長
「高品質の加工を全員の力で」小林 新潟工場
(2022/10/24 00:00)